…ホントに?
僕の家系の人間はとても醜いのだという。
物心ついた時から面やら布で顔を隠すため実の家族でも顔を知れない。
そう思うと入婿になった父さんはすごいなぁと思う。
あそこまで万年ラブラブにたどりつくまで、きっといろいろあったのだろう。
父さんは、僕のことを愛してくれている。
でも、僕は…。
「チビ」
「…」
だから、素直に父さんに甘えているきょうだいが羨ましい。
そして、そんなみんなに愛されている父さんはもっと羨ましい。
……まぁ、僕がこんな風な考えを抱くのはきっとあの陰口のせいだろう。
どこの誰とも覚えてないが、「お前なんか生まれなければよかった」と。
今の幸せを考えたら、僕が生まれた理由がどうしても思いつかなかったから。
「チビ」
「……」
「……チビやい!」
「…ごめんなさい」
考え事をしていて気づかなかった。
僕は慌てて振り返る。
「またぼーってして」
「ご、ごめん」
父がやさしく僕を抱き上げる。
いやいやと腕の中で暴れるのだけど、すぐに抱き締められておさえつけられる。
そうして抱っこされたまま、父さんは歩き出す。
そのまま広間に入ると、父に抱かれた僕を見てみんなが一斉に笑顔になる。
それを見た途端、なんだか急に眠くなってきた。
父の肩に顔をうずめてぐずりと顔を押し付ける。
あたたかさがとても心地いい。
……このあたたかさを僕はよく知らないけど、きっとそれはすごく大切なもののはずで。
それを知っているみんなが羨ましくって……。
……あれ? なんで羨ましいんだろう?
僕は、父さんのことが大好き。
みんなのことも大好き。
なのに、なんで羨ましいなんて思うんだろう?
……わからない。
でも……眠いからどうでもいいか。
僕はそのまま眠りにおちた。
*
あの子は聡い子であった。
他人の機微にとても敏感であるし、その機微を敏感に感じ取ることに長けている。
……いや、聡いというよりかは……。
あの子は、自分の感情に鈍感な子だった。
俺はとても心配だった。
あの子はとても優しいから、きっと俺たちのために無理をしている。
だから、俺はあの子が本当にしたいことをさせてあげたいと思う。
……でも、それはできないとも父様は思う。
「あぁ」
あの子はどこまでも走り去っていってしまう───いずれ、天までも。
どこの親が我が子の死を願うというのだ、と。
グズグズと自罰で腐る心を抱えながら、俺はあの子の頭を撫でる。
───俺の愛する最愛の息子。
俺は、もうわかっているんだ。
お前の歩む先がどこへ続くか……。
だけど、そんな寂しいことしないでくれ。
俺だってお前とずっと一緒にいたいよ。
だけど、お前の瞳の向こうにはナニがいるんだ?
わからない……お前はどう想っている?
「なぁ、チビ…」
誰がなんと言おうと、可愛い我が子。