さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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やっぱキングですわ。



一番安牌そうな相手だよねって

「キング」

「おう」

 

俺たちが生涯を共にすると決めたのは約一年前のこと。

卒業式の後、一世一代の告白も多分断られるだろうと思っていた矢先、顔を真っ赤にした彼が小さく、だが確かにこくりと頷いてくれた。

その光景が信じられなかった俺は何度も「いいんだな!?」と確認して、その度に彼がこくこくと頷くのを繰り返してからやっと…俺たちは恋人になった。

お互い仕事もあるから毎日会えるわけでもなく、毎日電話をするわけでもない。だが休日が合えばどこかへ出掛けたり家でゆっくりと過ごしたりとそれなりに楽しくやっている……はずだ。

それなのに俺の心は晴れない。

 

「…どうかしたか?」

 

───年々、相方が美しくなっていっているような気がする。

はじめは惚れた欲目かと思っていたが周りから「綺麗になったよね」と聞かされれば話は違う。

確かに以前よりもカドが取れて愛らしい顔立ちになったような気がしなくもない。

いや、確実にしている。

おかげで心構えはしていたつもりだったが最近は彼関連のゴシップ記事が多い。

今月だけで三件も出ていていい加減頭打ちになるんじゃないかと思っていたのにまだ上がってくるのかと感心したくらいだ。

それに本人に自覚はないようだがイベント事に出演すると必ずといっていいほど恋愛関係の話に巻き込まれるようになった。

ここ最近では"あの一族の長兄"枠としてキャラ付けされ始めてからは女性誌だけでなく男性誌でもその話題が取り上げられるようにもなっている。

昔から華奢で、今となっては母親譲りの美貌が顔を見せ始めているせいか、男性誌に出てもまったくむさ苦しくないのも要因だろう。

「シルバーチャンプならいける」と、どこぞの変態野郎がよからぬことを考えているのを何度か耳にしたこともある。

相方として言わせてもらえば複雑な心境だ。

 

「なにか、悩んでいるような顔に見えるが」

「いや、そこまでの悩みでもない」

 

世間にはこの関係であることを隠しているのが悪いのか。

いや公表したら公表したでアイツらが攻勢仕掛けてくることは目に見えてる。

シルバーチャンプの父母や実質保護者といっても過言ではないステイゴールドにはもう認めてもらっているのは幸いではあるが。

 

「はぁ……」

「なぁ、キング」

 

グルグルと頭を悩ませていると不意に声をかけられる。

ゆるりと顔を上げれば眼前に彼の顔があって。

 

「俺、お前しか見てないよ」

「っ……!!」

「だから、さ」

「な、にを」

「そんな顔しないでくれ」

 

そう言って彼は困ったように笑う。

そんな顔をさせているのは誰だ。

俺だ。

 

「……すまない、チャンプ」

「いや……俺の方こそ悪かったな。変な気ぃ遣わせちまったみたいで」

「そんなことは……」

 

ないと言いきれないのが辛いところだがそれは口にしない。

だが俺の心情を察してくれたのか彼は小さく笑ってから俺の頭をそっと撫でた。

 

「俺がお前を選んだんだ。だから胸張ってりゃいいさ」





でもそれはそれとして不安なキングくんはいるんだ。
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