どこの世界でも起承転結の起は悲惨になる銀弾概念。
幼いお父様が現れた。
それもかつての自分たちと同じ…、それよりかもっとひどい扱いを受けた姿で。
「え、と、おいで…ッ!?」
差し出した手は本気で噛みつかれた。
向ける目には敵意と恐怖。
だがその目は片方しか機能していないようで、機能していない方は遠に失っているよう。
「ごめん、なさいッ!怖い思いさせちゃって、ごめんなさい……ッ!」
それでも必死になって抱き寄せれば、今度は噛みつかれることはなく、ただ困惑された。
その困惑はきっと痛みと恐怖と、それから……。
*
「あ、あの……」
「……っ!」
何とか家に連れ帰り、声をかければ彼はまた逃げようとした。
「待って!何もしないから……!」
「……」
彼は足を止めてこちらを向いた。
「えっと……、僕はシロガネハイセイコと言います。他にもこの家には僕のきょうだいがたくさんいて…」
「……?」
不思議そうに首を傾げる彼の指先は曲がっていて、後天的なものだと推測できた。
おそらく歳も見た目の体つきよりもっと上だろう。
「……僕たちはみんなここで暮らしているんです」
それからゆっくりと僕は話す。
この家のこと。
ここは安全であること。
この家でどうやって暮らしているか……などなどについて話した。
その間に彼は眠ってしまったけれど、また…一人ぼっちになんかさせるものかと僕はその手を握った。
「あ、あの……」
それからまたしばらく経って、彼はようやく言葉を発するようになった。
「はい」と僕は答えるが、彼はまた困った顔をした。
「おにい……さん、は」
「え?」と思わず聞き返す。
すると彼は少し考えて、もう一度言った。
「……シロガネハイセイコさんは」
「あ、はい!えっと……、ハイセイコでいいですよ?」
そう答えれば彼は小さく笑った。
それから、
「ぼく、何もできませんけど…それでも、いいんですか?」
「え……」
「えっと、それは前の家で……」
慌てて弁明してくる彼に思わず言う。
「大丈夫!……ただ一緒にいてくれるだけでいいんだよ」
そうしてまた経って、彼は少しずつ言葉を発してくれるようになった。
*
幸せと呼ぶには呼べない悲惨な日常ばかりだった。
愛なぞ与えられることはなかったし、この風貌を見れば誰だって僕が『バケモノ』だと思うだろう。
それでも僕は、あの家族を愛そうと思った。
曲がりなりにも血が繋がった家族であったし。
たとえそれが自己満足でしかなかったのだとしても、僕が愛してあげたいと思ったのだから……。
「……」
空洞になって久しい片方の目を撫でる。
「……はぁ」
どこの世界でも顔に傷を負うんだよね。