さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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その時から、



あの頃の出会い

シルバーチャンプという競走馬は、入厩した時点である程度"完成"されていた。

体格は非常に小さく、見る人が見れば断るだろう矮躯であったが灰方厩舎には『前例』があったので快く受け入れた。

だがしかし、

 

「せめてジョージの奴がいたらなぁ」

 

困ったことに。

シルバーチャンプと併走した同厩舎の馬、そのことごとくが心を折られた。

そんなはずはなかろうと普通では有り得ぬことだがこの血族に至っては有り得るもので。

元より、非常にそもそもの肉体スペックが高い血族だ。

それが、さらに親族同士での遊びの一環で高負荷の動きをしていたらどうなるか?

それはもはやその年頃の限界を超越する。

結果、シルバーチャンプと併走させようとすると皆嫌がるようになったため他厩舎で相手を募ることとなった(なお他厩舎の馬の心も折っていないとは言っていない)。

 

「えっ」

 

そうして白羽の矢が立ったのはステイゴールド。

中々の問題児ではあるがこの馬ならば心が折れるなんてないだろうと…というかそんな場面が思い浮かばないとも言うのだが。

しかし灰方厩舎の人々が驚いた声を出した理由は違う。

ステイゴールドがシルバーチャンプと併走しても心が折れなかったからでは無い。

()()()()()シルバーチャンプが自分からステイゴールドにスキンシップを取りに行ったからである。

それはそうとステイゴールドの方も普段しない濃密なスキンシップを取り始めていたからもう収集はつかなくなっていたが。

ちなみに当の本馬たちはというと周りのことなど気にせずふたりの世界に入っていたけれど。

 

 

その日、ステイゴールドの目は奪われた。

これから行われる併走に辟易としていたステイゴールドの前に引き出されたのは小柄な芦毛の馬。

普段ならただそれだけなのだが、真っ先に目を奪われたのはその美しい瞳!

ゆらゆらと揺らめく水面のような不思議な輝き。

それは、ステイゴールドの知るどんな同族よりも美しく思えた。

そして、その美しい瞳に自分が映った時、 ──俺はこの馬と生涯を共にするのだ。

そんな確信がステイゴールドの中に湧き上がる。

いやむしろこれは義務だ!

そうに違いない!

……そんなわけはないのだが、まあ思い込みというのは強いものであるしそもそもステイゴールドの大元-サンデーサイレンス系の馬の多くは彼の目の前にいる馬の血縁に惹かれるものではあるが。

閑話休題。

そうして二頭走り出したが…。

 

(コイツ、思った以上速い!)

 

この小さな体から出されているとは思えないスピード。

どこかあどけない所作から年下のはずだけれど、その実力はみんな意気込んでて走ると疲れる(G1)レースでも通用するだろうと確信するほどの。

それから併走が終わり……共に駆けた相手に投げかける言葉はひとつしか思い浮かばなかった。

けれど、────するり。

 

『!!!』

 





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