どれだけ想われても。
【王冠一族】はここ二十年ぐらいの勃興ながら世界中に影響力を持ち、知らぬものはそういないと言われるほどの一族だ。
牡バならクラウン、牝バならティアラを冠する彼ら彼女らの多くは美しい芦毛を持ち、またその総てが目を見張るような末脚を持っている。
その一族の始祖は極東のある地にいた、一頭の芦毛。
本当なら一族の当主として迎え入れるつもりであったのだが、当の本人が固辞したため、代わりに一族で一番に世界に名を轟かせた者が当主となっている……。
「行きたくない…」
そんな、件の始祖がシルバーチャンプである。
元々、生まれがサラ系であるからあまり人気にならないだろうと高を括っていたが、……大間違いだった。
何故だか自分の走りに惚れたという珍しい人が次から次へと世界の名牝たちをシルバーチャンプの元へ送り。
それはそうと自分のところで暮らしませんかと熱烈なラブコールを送ってきたため、丁寧に断った。
とはいえ今でもその誘いはあるのだが。
「なんでこんなことになったんだろ…」
今では日本で走っている我が子よりも世界にいる我が子の方が多く。
そのすべてがそれなりの結果を残しているのだから、なんとも言えない。
我が子にはシルバーチャンプの現役時代の戦績を軽々と超える子が何人もいる。
母親の血統が良かったんだろうなぁとしみじみ思う。
「…俺を引き入れたいなんて」
社交辞令だろう。
あれが本心なら洗脳でもされてるのでは?
せめて同期の、俗にいう黄金世代のヤツらだったらまだ分かるものの、なんでよりによって大して強くもなかった俺にあんな誘いをかけるのか……理解しかねる。
そう考えつつ、そろそろ出ないとまずいと思って支度をし始めるシルバーチャンプだった。
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今日も今日とて自分の価値に気がついていない後輩は俺の世話を嬉々として焼いては俺に可愛がられている。
「なァ」
「はい」
ろくに言わずとも済む関係。
見るやつが見れば血涙を流して羨ましがりそうなこの関係は、学生時代から変わらず今日も続いている。
学生時代の3年間は無駄ではなかった。
そんな俺の内心を知る由もなく後輩は俺の言葉の続きを待っている様子であるので、大人しくいつものように告げてやる。
「今日も可愛いな」
「…えへへ」
たぶん、幼い頃からこうだったんだろう。
かの母親に可愛い可愛いと可愛がられて育ったに違いない。
その愛に報いるように、後輩は俺に対して惜しみなく愛情を注いでくれる。
……いや、それは語弊があるか?
俺が勝手にそう感じているだけであって、コイツはただ自分のしたいことをしているだけだな。
そう考える俺の内心など露知らず、今日も今日とてこの可愛い後輩は俺の世話に専念するのであった。
けれど、あの黄金からの言葉だけは。