あなただけ!
「僕のこと好きなんて変なの」
そう言ってウマの形をした怪物は笑う。
怪物に心酔する者は多く、また怪物を倒そうとする者も多い。
もはや愛憎入り交じったといっても過言では無い。
それを知ってか知らずか、怪物は喉を鳴らして楽しそうに笑うのだ。
「そんなこと言ったら、食べちゃうよ?」
ツイと顎を持ち上げて、ゆるりとイタズラに微笑む。
大きく口が開かれて、ガパリと音を立てそうな動きだった。
それでも動かない自分を見て、怪物は面白くなさそうな顔をした後、まるで触手の様にゆらりと手を伸ばし僕の手をひとまとめにして勢いよく地面に押し付けた。
あまりの衝撃に身体が痺れるが痛みはない。
むしろ動けないほど強く手首を掴まれて怖いとすら感じる。
そのまま無理やり押し倒されたと思えば強引に捕食され。
ぴちゃりとした水音を立てながら噛み付くように何度も重ねられれば直ぐに鉄の味がしてきた。
「……怖い?」
横に首を振る。
痛いけど、怖くない。
むしろ胸がきゅんとしている気がする。
「そっか」
怪物は僕の上から退き、また隣に寝転んだかと思うとそのまま抱き寄せられた。
そして今度は優しく頭を撫でられる。
その心地良さに思わず擦り寄ると怪物は嬉しそうに笑った。
「可愛いね」
「……可愛くない」
「ふふ、そういうところだよ」
そんなやり取りをしているうちに眠くなってしまい、瞼が重くなるのを感じると怪物がそっと囁くように語りかけてきた。
それはまるで子守歌のように…。
「そう言ったからには、責任とってね」
*
そのウマは怪物が知る限りで最も美しい存在だった。
見目が、というわけではない。
ただ、在り方が美しい。
また言い換えれば魂とでもいうべきものが…とても、美しかった。
「あ、久しぶり」
怪物がウマに声をかけると一瞬驚いたような顔をした後すぐに笑った。
「ありがとう」
怪物にはその笑顔は眩しすぎた。
しかし、それは不快ではなく、むしろもっと見ていたいとすら思うほどだった。
「ねぇ、また遊びに行かない?」
そう問えば彼は少し困ったような顔をしてから口を開いた。
「……いや、」
「どうして?」
「だって……俺なんかがお前と遊びに行っていいのかなって……」
そう言って俯くウマは今にも泣き出してしまいそうで、怪物は考えるよりも先に手を握っていた。
「ねぇ、いいから行こうよ」
その言葉にウマは驚いたように顔を上げた後、嬉しそうに笑ってくれた。
「うん!」
それから二人は毎日のように一緒に過ごすようになり…?
ゆいいつ食べられないあなた。