さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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銀弾ってめちゃくちゃ愛されてるんだろうなぁ…。



出会い

そこに移動することになったのは一重に、初年度産駒のあの子たちがよく活躍したから。

そりゃあ初年度からクラシックの内の4つとスプリンターズSも取ればそうもなろう。

さすがの僕だってそんな奴のこと聞けば「ほえ〜」ってなるわ。

それはそうと、

 

『舐められたらアカンからな!うし、別嬪別嬪!』

「…」

 

こんなに着飾る必要ないんじゃないのかとか諸々…思いつつも、どうせ僕にどうこうできる話でもないので大人しく車に乗る。

 

『辛かったらいつでも帰ってきていいからな!』

 

その言葉にこくりと頷けば、それからブルルンとエンジンがかかった。

 

 

ソイツの名前は嫌でも聞いた。

俺の二年目に俺の初年度と同等のG1勝ちの産駒。

それもあんな圧倒的な勝ちっぷりと来た。

しかもこことは違う中小規模の…。

まァ、それはそれ、これはこれ。

 

「…」

 

ソイツと初めて会った時、ソイツは放馬していた。

人の意識が自分に向いてないのを見て、スルッと逃げていたらしい。

楽しそうに辺りを走り回っては立ち止まったり、空を眺めたり。

 

「おい」

「…、」

 

はじめ、その体格から幼駒かと思った。

にしては走り方が洗練され尽くしているし、 何よりその目付きが。

そうまるで。

……いや。

まさかな。

だがしかし。

……もしそうなら。

俺はコイツを、どう扱うべきなんだ?

…というのもつかの間。

 

「…」

「は、」

 

トテトテと走りよってきたソイツの小さな手が俺の服の裾を掴んだ。

ギョッと見たソイツの目には微かにだが困り果てているとわかる色が見え隠れしていて。

それでようやっと、俺はコイツが件の新入りかと分かったのであった。

 

 

新しい場所に着いて。

そういや日課のランニングしてなかったなと、話し合っている人たちを後目に「走ってくる」と告げて。

一人で色々と走っていれば、声をかけられ。

そちらを見ると仏頂面の男が仁王立ちしていた。

え、こっわと後ずさる間もなく目の前まで来た男は一言こう言ったのだ。

───幼駒がなにしてる?と。

 

(…ぁ。あ〜……)

 

 

僕、小さい子に見られてるのか…。

いやまぁ、そう見えるよね、この体格。

なら…、

 

(そろそろ元の場所に戻ろうと思ってたけど分からないから連れて行ってもらおう!)

 

目の前のこの人、こう見えて優しそうだし。

それになんか親しみがある見た目だし。

末っ子のあの子によく似てるんだよこの人。

 

「…いつもの大広間に行けばいいか」

 

結果、目の前のこの人は何も言わず僕を連れて行ってくれ…。

 

「…これから、よろしくお願いします」

「おう」





とりあえず引退直後に「銀弾が種牡馬引退したら面倒見る!」って灰方調教師と馬主さんと騎手くんで喧嘩してるんだ。
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