おだやかな暮らし。
「グローリーって本当に顔がいいよねぇ」
抱き着きながらしみじみとそう言うと「嬉しい」と返ってくる。
昔なら「顔だけ?」とちょっと不機嫌になっていただろうが、年月を経た今となっては、素直に喜ぶ。
そして、そのままの状態で、 ──ちゅっ。
と、頬にキスをされた。
その不意打ちは流石にちょっと驚く。
グローリーはそんな僕の反応が面白かったのか、クスクスと笑った後、そのまま続ける。
……本当に成長したなぁ……。
僕はしみじみと思いつつ、グローリーゴアを受け入れるのだった。
*
僕とあの子が一緒になったのはまだ若い頃だった。
大人にもまだギリギリなっていないほどで、そんな年齢なのによく一緒になるのが許されたものだと今では思う。
実力こそ、二人揃ってレースの世界では抜きん出ていたけれど、それでもまだ子供と大人の境界線に立っていた。
そんな時に、僕はあの子に告白された。
それはまだ大人になる準備もしていなくて、ただ単にレースの世界でがむしゃらに走っていた頃だったけれど……。
それでも、僕はあの子の想いを受け入れた。
……だって、僕もあの子のことが好きだったから。
それからは二人三脚でバ生を駆けた。
二人並んで同じ道を走ったし、辛い時は二人で泣いたりもした。
そんな日々がずっと続いていて、いつの間にか僕とあの子だけになった。
まぁそれには僕らの子どもたちがみんな大人になって家を出ていったからっていうのもあるのだけど。
「好きだよ」
「うん」
仕事も無事引き継ぎ、自由の身になったグローリーは暇さえあれば僕に愛の言葉をささやく。
そんなに言われなくても分かっているというのに言わないと不安になるらしい。
だから、僕もそれに返す。
毎日のこのやり取りはきっとこれからも続くだろうけれど……。
それでもいいと僕は思った。
慣れてるし。
「こんなに綺麗なウマに大好きって言われる僕は幸せものだなあ」
「僕の方が幸せだよ」
「張り合うの?」
「張り合う」
そう言って、またグローリーが僕に抱き着いた。
……本当に幸せものだ。
僕は今、とても幸せな生活をしていると思う。
大好きな人と一緒にいられて、そして時々会いに来てくれる子どももいて……。
でも、そんな日々に一つだけ不満なことがあるとすればそれは……。
──もうちょっとデートみたいに外出できたらいいのだけど。
二人だけになったのだから好きにどこでも行けるというのに。
何度頼んでも「ダメ」って言うばかりなんだよなあ。
僕、キミとなら────。
幸せ者たち。