でも俺だけは。
シルバーチャンプは自分に才能がないというが。
「え、」
周りの人々はそんなことないということを、知っている。
父であるオグリキャップ以上の超前傾姿勢で、そのストライドの大きさたるや!
しかもそのストライドをピッチ走法並の動きで繰り出してくるのだからたまったものではない。
そして天性のスタミナにシームレスにギアチェンジできる脚。
「あ、」
その末脚は、大外から一着をかっさらうには十分な武器だ。
「うおおおお!」
『来た!来たぞ!シルバーチャンプだ!』
「いっけえ!チャンプ!」
「頑張れー!!」
『先頭はセイウンスカイ!しかし外から上がってくるのはエルコンドルパサーとシルバーチャンプ!!』
『これは面白い展開ですねえ』
「いけ!いけ!」
「そのまま差し切れ!」
「差せええええ!」
その熱狂っぷりはさながら本番のレースのよう。
だがしかし現在は一般客を入れた学園のイベントの一幕であり。
『素晴らしい追い上げでしたが一着はエルコンドルパサーです』
イベントは大盛り上がりも大盛り上がり。
ファンサービスだってキチンとする。が、
「おけーり」
「…はい」
「診る」
「はい」
それとなく抜け出てきた可愛い後輩を人気のないところに連れ出し、触診する。
嫌に手馴れてしまったものだ。
何が嫌で可愛い後輩の脚の機微が分からにゃならんのか。
「左右」
「……左です」
ふむ。
左足を持ち上げる。
そして診察。
違和感はあるが、我慢してる訳でもなし。
「当面はトレーニング軽くしろ」
「……はい」
不貞腐れている。
トレーニングできなくて悔しいのと、自分の虚弱っぷりが腹立たしいのだろう。
気持ちは察せる。
抱きしめるくらいはしたくなるのだが、そこをこらえなきゃいけないのが辛いところ。
……冗談はさておきコイツは無理しがちだ。
「しっかり休みゃ問題ねぇよ」
「でも…」
あどけないガキに、そんな無理をさせるわけにはいかないわけで。
「……あの」
そんなことを考えていたら後輩が何か言いたそうにしている。
なんだ?
「どうした?」
「……その」
「ん?」
ああ、可愛いなあ!
この後輩は自分が愛されてることを知らないから、こういうところでも遠慮するんだよなあ。
そこも可愛いんだけどな!
「……そんなこというの先輩ぐらいですよ」
「あぁん?」
「全部口に出てます」
「は、」
「あ、俺と二人きりの時だけだから大丈夫ですよ」
健気にサムズアップされるが、それどころじゃない。
「おま、」
「はい?」
「……お前」
「はい」
「……いやいい」
「そうですか?」
……コイツのこういうところも可愛いんだよなあ。
素直で可愛い。
「…そうですか」
こういうところからポイント貯めてってるんだろうなって。