さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

1481 / 1481

でも俺だけは。



誰も知らない

シルバーチャンプは自分に才能がないというが。

 

「え、」

 

周りの人々はそんなことないということを、知っている。

父であるオグリキャップ以上の超前傾姿勢で、そのストライドの大きさたるや!

しかもそのストライドをピッチ走法並の動きで繰り出してくるのだからたまったものではない。

そして天性のスタミナにシームレスにギアチェンジできる脚。

 

「あ、」

 

その末脚は、大外から一着をかっさらうには十分な武器だ。

 

「うおおおお!」

『来た!来たぞ!シルバーチャンプだ!』

「いっけえ!チャンプ!」

「頑張れー!!」

『先頭はセイウンスカイ!しかし外から上がってくるのはエルコンドルパサーとシルバーチャンプ!!』

『これは面白い展開ですねえ』

「いけ!いけ!」

「そのまま差し切れ!」

「差せええええ!」

 

その熱狂っぷりはさながら本番のレースのよう。

だがしかし現在は一般客を入れた学園のイベントの一幕であり。

 

『素晴らしい追い上げでしたが一着はエルコンドルパサーです』

 

イベントは大盛り上がりも大盛り上がり。

ファンサービスだってキチンとする。が、

 

「おけーり」

「…はい」

「診る」

「はい」

 

それとなく抜け出てきた可愛い後輩を人気のないところに連れ出し、触診する。

嫌に手馴れてしまったものだ。

何が嫌で可愛い後輩の脚の機微が分からにゃならんのか。

 

「左右」

「……左です」

 

ふむ。

左足を持ち上げる。

そして診察。

違和感はあるが、我慢してる訳でもなし。

 

「当面はトレーニング軽くしろ」

「……はい」

 

不貞腐れている。

トレーニングできなくて悔しいのと、自分の虚弱っぷりが腹立たしいのだろう。

気持ちは察せる。

抱きしめるくらいはしたくなるのだが、そこをこらえなきゃいけないのが辛いところ。

……冗談はさておきコイツは無理しがちだ。

 

「しっかり休みゃ問題ねぇよ」

「でも…」

 

あどけないガキに、そんな無理をさせるわけにはいかないわけで。

 

「……あの」

 

そんなことを考えていたら後輩が何か言いたそうにしている。

なんだ?

 

「どうした?」

「……その」

「ん?」

 

ああ、可愛いなあ!

この後輩は自分が愛されてることを知らないから、こういうところでも遠慮するんだよなあ。

そこも可愛いんだけどな!

 

「……そんなこというの先輩ぐらいですよ」

「あぁん?」

「全部口に出てます」

「は、」

「あ、俺と二人きりの時だけだから大丈夫ですよ」

 

健気にサムズアップされるが、それどころじゃない。

 

「おま、」

「はい?」

「……お前」

「はい」

「……いやいい」

「そうですか?」

 

……コイツのこういうところも可愛いんだよなあ。

素直で可愛い。

 

「…そうですか」





こういうところからポイント貯めてってるんだろうなって。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

そのウマ娘、亡霊につき(作者:カニ漁船)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

そのウマ娘は、全てが謎に包まれていた。経歴、素顔、生まれ……その全てが謎に包まれたウマ娘。▼亡霊と呼ばれた彼女がトレセン学園になにをもたらすのかは、まだ分からない。


総合評価:3859/評価:8.33/連載:183話/更新日時:2023年08月06日(日) 21:00 小説情報

89式和製ビッグレッド(作者:ディア)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

米国には最も偉大な栗毛の馬に【ビッグレッド】と称号をつける習慣があり歴史上その称号をつけられたのはマンノウォー、そしてセクレタリアトのみ。▼そのセクレタリアトの後継者が1986年、日本にて誕生しようとしていた▼※注意!▼これは作者が89世代にセクレタリアト産駒の最強オリ馬を投入したらどうなるかを想像したものであり、競走馬パートとウマ娘パートを入り混ぜた小説で…


総合評価:490/評価:6.46/完結:113話/更新日時:2025年03月10日(月) 21:00 小説情報

貴方の強さは私が知っている。(作者:魔女っ子アルト姫)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

目が覚めたら貴方は……ウマ娘になっていた!!▼何が何だから分からないけど、頼りになる友達の力を借りながら前向きに生きて行こう!!▼RPG-7様より、ランページのAI作成イラストを頂きました。▼【挿絵表示】▼【挿絵表示】▼【挿絵表示】▼


総合評価:11528/評価:8.18/連載:668話/更新日時:2026年07月31日(金) 04:20 小説情報

また君と、今度はずっと(作者:スターク(元:はぎほぎ))(原作:ウマ娘プリティーダービー)

あの青春をもう一度▼彼等は願い、それは叶えられた▼【挿絵表示】▼2022/5/2、蜜柑餅さんより寄進された支援絵です▼【挿絵表示】▼2022/1/3、カルピ水さんより寄進された支援絵です▼【注意!】▼本作の掲示板(転生者が出て来る方)には、他版権作品のキャラも出没しレスします。タグの「転生者掲示板回のみ多重クロス」とはそういう意味です▼読む際にはご了承の程を…


総合評価:16034/評価:8.29/連載:205話/更新日時:2025年12月26日(金) 10:18 小説情報

桜の姫がターフを駆けた軌跡(作者:夜刀神 闇)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

競馬ファンである女の子が2020年代の競走馬に転生する物語でございます。▼ドゥラメンテ産駒、しかも白毛の牝馬として。▼ターフを駆ける、競走馬として。▼いつか、誰もいない先頭の景色を見るために。▼チート過ぎても面白くないのでそこそこ競走馬としての宿命みたいなのを背負わせてます。ごめんね主人公、そして主人公が生まれたせいで勝てなかったコたち。▼あと、鞍上と馬の関…


総合評価:1791/評価:8.06/連載:41話/更新日時:2026年07月21日(火) 04:46 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>