惹かれた理由?
ウチの母親は危なっかしい。
小学校の途中で追い抜かした背のこともそうだし、人をすぐ信頼する善性も。
「おかえりなさい。今日はどうだった?」
「…フツー」
あどけない人だ。
いつもフワフワとしていて見ているこっちが心配になる。
俗にいうママ友とやらもいないようだし。
「おう」
「…ただいま」
少し考えていると珍しいことに父親が仕事部屋から出てきた。
この時間帯ならいつもまだ仕事なのに。
「ん」
「あれ?仕事終わったの?」
「ん」
「そっかぁ」
父の頭を撫でる母の姿はどうにも夫婦には見えない。
どっちかというと補導案件に見える。
だって見るからに母の見てくれは幼女だし、父の見てくれはアウトローだ。
見る人が見たら警察沙汰になりそうな危うさがある。
それを眺めていると母が不思議そうな顔で声をかけてきた。
その言葉に「別に」といつも通りに返すと「そう?」とまたいつものように返答が返ってくるのであった。
*
「相変わらず、僕のこと大好きね」
「大好きじゃねぇ、愛してるんだ」
「……はいはい」
「照れてやんの。…かーわい」
彼と出会ったのは偶然だった。
とっくに成年してるというのに補導されそうになっていたところを一緒に逃げてくれた形。
あの頃から僕の容姿は特に変わらず、俗にいう合法ロリであったため、その出会いの時以外にもよくそういう趣味の人に絡まれた。
それをいつも助けてくれたのだ、彼は。
それからも事ある毎に助けてくれて、いつしかそれは恋心へと変わっていて……。
……いや、これは今関係ないか。
とにかく僕は彼のことが好きで好きで仕方ないのだ。
「どうした?」
「…いや、別に?」
それはそうと、彼との付き合いは長いが彼のことはよく知らない。
知っていることといえばレースに関する仕事をしていること、そして有能なスカウトマンらしいということだけだ。
自分の功績を自慢したりしない人だから
それ以上は何も知らない。
……いつか教えてくれるのだろうか?
そう思っていたのだが、事態は急変した。
「なァ、」
「なぁに?」
僕よりも体の大きい彼に寄りかかりながらくふくふと笑う。
ホント、好きだなあ。
こんなに他人を好きになれるなんて思わなかった。
「…外、出てねぇよな?」
「スーパーぐらいだねぇ。あの子もどこか遠くに遊びに行きたいという子ではないし」
「あっそ」
「僕はキミ以外見てないよ。…あ、あの子は別ね」
「分かってら」
彼は少し寂しそうだ。
でも、こればかりは仕方がない。
あの子はまだ幼いから。
……いや、僕はもうあの子が大人になったとしても彼の元から離れられないだろう。
だって、こんなにも彼を愛しているのだから。
……でも彼がいなくなったら?
さすがに僕の方が年上だから僕の方が先だろうけど。
「…」
……だからせめてそれまでは、この幸せな時間が続くことを願っている。
一人勝ち…かもね?