さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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願掛け。



俺だけの

僕の髪は長い。

昔からの癖だ。

現役の時よりは短くなったが、それでもごく一般的な同性と比べると…長い。

 

「手先が器用なんだね」

「まぁな」

 

自分で自分の髪をアレンジなんてできるウマではないのでもっぱらポニーテールだったところ、いつしか親友-サンデーサイレンスが暇さえあれば僕の髪をいじり始めた。

"願掛け"はもう終わったが、それでもまだ僕の髪は長いままだ。

誰かのためではなく、自分の好きなように髪を伸ばすと言うのは悪くないのかもしれないと最近は思い始めてきた。

とはいえ、髪を切るという選択肢は今のところない。

髪の長い僕を見慣れた我が子や孫たちにそれとなく伝えてみたら本当に、ほんっっとうに…泣いてまで嫌がられたので。

 

「ん、よし出来たぞ」

「ありがとう」

 

本当に、凝っている。

かつて、僕の世話役だった誠くん並の腕だ。

それを言うと拗ねそうだから何も言わないけど。

 

「サンデー」

「あ?」

「娘さんにもこうやって結うの?」

 

サンデーも子どもがいっぱいいるしね。

だから慣れてるんだろうかと、なんの気なしに聞いてみた。

だけど返ってきたのはなんとも微妙な表情で……。

もしや地雷を踏んだんだろうか……?と僕が訝しむより早く、サンデーが口を開いた。

その顔には若干の苛立ちのようなものが見て取れる。

ひょっとして僕が知らないだけでこういうにまつわる何かが過去にあったのかもしれない……と考えていると、サンデーのため息とともに答えが吐き出された。

 

「お前にしかやんねぇよ」

 

あぁうん、その反応でもう僕は色々と察したよ。

これは間違いなく地雷だ。

怒髪天つかないようにできてよかったと胸を撫で下ろす僕をよそにサンデーが口を開く。

 

「いまの年頃になっても『やって!』って言われる親はお前ぐらいだっての。ガキの頃ならいざしらず」

「そうかなぁ?」

 

みんなオシャレさんだから色んな髪型して!って頼まれるのは案外楽しい。

おかげでヘアアレンジの腕が上がったのは言わずもがな。

どんな髪型にでも対応できるようにと日々練習したかいがあったってもんだ。

僕が難しければ難しいほど燃えると知っててお願いする子は、僕の性格を熟知しているから……うん。

子どもからの期待には答えないとね!

 

「スプレーで固めてっけどあんま激しく動くなよ」

「はぁい」

「あと、」

「ん?」

「……いや、なんでもねぇ。準備してこい」

「うん!」

「準備終わったらすぐ出るぞ」

「うん!」

 

今日はサンデーとお出かけだ。

と言っても、おでかけはおでかけなんだけど……ちょっと特殊で。

『お前とデートがしたい』ってお願いをされたのでこうして一緒にお出かけするんだけど……。

 

(……本当にデートなんだろうか?)

 

いや、サンデーは僕と一緒に出かけることを"デート"って言い張るのが最近だからなぁ。

 

(まぁ、サンデーがいいならそれでいいけど)





色んな髪型してそう。
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