さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ふたりだけの、秘密。


"大人"になって

気づけば大人になっていた。

自分以外の若ェヤツらはみんなキラキラとした青春を送っていて、たったひとり僕だけが未練がましく「夢」ってヤツにしがみついている。

 

「…はぁ」

 

気づけば酒も煙草も嗜める歳になっていた。

人気のない喫煙所でジリジリと短くなっていく煙草をただ眺めて。

甘ったるくて苦い煙草。

 

「バレット」

「トール」

 

喫煙所のドアが開いて、相棒である"トール"-本名は白峰透という-が顔を覗かせる。

いつもと変わらない足取りで僕の傍にやってきたトールは煙草を取り出すがどうにもライターがないらしい。

ポケットにいつから使っているのか検討もつかないが、まだ使用可能な安物のライターを持っていたので貸そうとすれば制止させる。

 

「…煙草の火ィいんだろ」

「これでいいよ」

 

顔を近づけてきたトールの煙草の先が僕の火のついた煙草の先に当たり、ジジジ…と燃える。

火がつくと美味そうに煙草を吸い始めるトール。

 

「なぁバレット」

「なんだ」

「また飲みに行かないか」

「…それはいいけど飲み過ぎないように頼むぜ。服にゲボ吐かれて朝まで半裸はもう二度とゴメンだかんな」

「…前も謝っただろ」

「こういうのは何回も言い含めた方がいいんだよ」

 

そんな話をしながら煙草を吸う。

 

「…にが」

「やめといた方がいいのに」

「いーんだよコレで。こんぐらいしたら周りへのハンデにもなるだろうしさ!」

 

そう言っておきながら、本当は煙草などあまり好きではないのだけど。

それでも煙草を吸い続けているのは、

 

「それに、トールと同じ銘柄だし。匂い嗅ぐと落ち着くんだよ」

 

僕の吸っている煙草がトールと同じだから。

味は苦手だけど匂いは好きだ。

そう言って二十歳の誕生日から頑なにその煙草を持ち続ける僕をトールはいつも通りにヤレヤレといった顔で見やる。

 

「んでどこに飲みに行くつもりだ」

「お酒が美味しいお店なんだって。あ、ご飯も美味しいらしいよ」

「そりゃ当然だろ。僕飲めねぇんだから」

 

ご機嫌に「どの日が予定空いてる?」だとか聞いてくるトールに「トレーナーの、アンタの方が予定把握してるだろ」と返す。

そして「アンタの予定が空いてる日ならいつでも付き合うよ」とも。

 

「そういやトール。メシ、ちゃんとバランスよく食ってる…」

「…」

「目ェ逸らすな。…はァ、分かった。また、オフになったらメシ作りに行くわ」

「ごめんね…」

 

トールはほっとくと冷凍食品や外食でメシを済まそうとするのでいつしか僕がオフの日のたびに作り置きをしに行くことになっている。

なんでトレーナーであるトールよりもアスリートである僕の方が食べ物の栄養を考えてんだろと思わなくもなかったが、

 

「体重、減ってたら承知しねェから」

「…善処します」





元性別軸の話。ちょっとシングレ味入ってるかも?
あれだけの現役期間だったら普通に成人してるよな…と思ったと供述しており…。

僕:
シルバーバレット。実質トレーナーの妻と化している。
トレーナーと長年過ごすうち、ふたりきりのときは『トール』と呼ぶようになった模様(第三者が近くにいる場合はこれまでと同じく『先生』呼び)。
成人になった瞬間煙草(トレーナーが吸っている銘柄)を買った。もちろんトレーナーには止められたが『アンタと同じ匂いがする。落ち着く』とのひと言でノックダウンさせた。
が、基本は煙草を吸わず匂いを嗅ぐだけ。ほんの時おり少しだけ口をつけるくらい。しかし「にが〜…」と言ってはよく渋い顔をしている。
なお酒には滅法弱い。軽い缶チューハイでも三分の一程度でふにゃふにゃ言いながら寝ている。ので、トレーナーと飲みに行く時はもっぱらちまちまとご飯をつついている。
…まぁ飲みに行く言うてもトレーナーとしか飲みに行かないんですけどね、コイツ。

トレーナー:
白峰透という名のトレーナー。僕からはふたりきりの時限定で『トール』と呼ばれている。
メシをよく食べ、酒はザル。煙草もまぁまぁ吸うヒトミミ。
なお酒には基本酔わないはずだが僕を前にすると場酔いするのか、ゲボ吐くくらいにヘロヘロになってしまう。
いつも何か食ってるし、僕がいないと食生活のバランスがアレになる人。
でも何故か太らないので同業からは首を傾げられているし、ウマの皆さんからはその体質を羨ましがられていたりする。
ちな人として色々と駄目なのでオフの日には僕が作り置きや家事をしにきているらしい。…もう夫婦では?
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