堕ちる。
「……」
一目見て、見惚れた。
まるで幽霊と見間違うような白い肌が世界と隔絶しているかのごとくのコントラストをしていて、触れれば消えてしまいそうな───そんな、少女だった。
その白い少女は、ただ、ぼんやりとそこに立ち尽くしている。
……いや、違う。
よく見れば少女は時折手を握り締めている。
まるで痛みを堪えるかのように、苦痛に喘ぐかのように。
……その姿が、ひどく危うげに見えて放っておけなかった。
だからだろう。
つい声をかけてしまったのは。
それが自らの首を絞めることになるとも知らぬままに。
*
そうして始まった僕と彼女との関係。
彼女は感情表現が薄かった。
よくて微笑むだけで、それ以外がほぼない。
かくいう僕もあまり喋るタイプではなかったから、会話は少ないものだったけれど。
……ただ、やはり彼女は笑っている時が一番美しかった。
───その、人形めいた無機質ささえ感じる微笑みが、僕にはとても眩しく思えたのだ。
「…変な人」
彼女を欲した僕を、彼女はよくそう評した。
本気で自分を欲しいなんて、と。
愛玩とか、所有欲のようなもので好きになられたことは多々あったが、本気で求められたのは僕が初めてだ、と。
そうして僕たちは友だちになった。
……いや、友だちというのも妙な話だろう。
そもそも僕と彼女に友情なんてものがあったのかさえ疑わしい。
互いに互いを好いていたのは間違いないだろうが、かといって恋愛のような情熱があったかと言われれば首をかしげるしかないわけで。
「…好きだよ」
それは恋情というには苛烈すぎた。
燃える炎よりもきっと熱い。
その感情を抱く僕すらも焼き尽くして灰にする。
……そう、それはきっと。
恋情なんて、生温いものではなかった。
・
・
・
彼女はよく本を読む子だった。
だからだろう。
彼女の部屋には本がぎっしり詰め込まれた本棚とベッドぐらいしかなかった。
年頃の少女らしい服やアクセサリーなどは一切ない、そんな寂しい部屋だった。
そんな部屋で彼女はただぼんやりと本か、外を眺めるだけだった。
その目にどんな感情を灯していたのかは知らない。
ただ、
「ね、」
「…」
「構ってよ」
彼女の視線が僕以外に向くのが許せなかった。
なにごとにも興味が持てないくせに、唯一興味を持った僕以外を見るなんて!
「…ふふ」
ぼんやりとした彼女が僕を見て、微かに微笑む。
…ただそれだけで許してしまうのだから、僕も僕だろうけれど。
「……可愛いね」
「キミの方が僕よりずっと可愛いよ」
「そう?」
塗り潰されちゃった!
…それを、後悔してなどいないけれど。