さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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いつもある傷。



噛みグセ

はむっと食まれたのに「んっ」と声をあげれば調子に乗ったのか、次から次へとはむはむされてしまう。

 

「やっ、んっ、やめてっ!」

 

ほっぺたも首筋も、何か色々なところをはむはむされて…変な気持ちになっちゃうよ。

 

「こらっ!」

 

少し強めに叱ると何とも言えない顔で見つめられる。

それでも指をはむはむ、いや、ちゅぱちゅぱしてやまないんだから筋金入りというか何と言うか。

 

「ホントに…僕のこと大好きだね」

「うん!だいすきっ!!」

「僕も大好きだよ〜」

 

*

 

意外と噛みグセがあったらしい…とは思っても歯型がつくほど強く噛んでくるわけではないからまだマシか。

 

「ねぇ、もうそろそろ寝よ?」

「やだっ」

「……どうして?」

「もっとあそぶのっ!」

「えぇ……もう僕眠たいよ。それに、明日も早いし……」

「やーだーっ!まだあそぶっ」

 

駄々こねて可愛いけど……僕はもう眠い。

 

「じゃあ、少しだけだよ?あと30分だけね」

「うんっ!!」

 

結局、30分では終わらず2時間ぐらい遊んだが。

でも本来あったはずの予定が何故かキャンセルになったのでこれが不幸中の幸いってヤツ?

 

「はいはい、はむはむしないでね〜」

「や〜」

「や〜じゃない」

「はむはむっ」

「もぉ……」

 

*

 

今日もたくさん遊び、ようやく寝てくれた。

 

「はぁ……疲れた」

 

でも、寝顔が可愛いから許せちゃうんだよね。

 

「おやすみ」

 

 

・

・

・

 

はじめて会った時から『自分のモノだ』って思った。

お人好しなまでにやさしい人。

簡単に誰かに取られてしまいそうなほどやさしい人であったから、暇さえあれば噛み付いていた。

自分のモノだって、誰にでも分かるように。

でも……、

 

『僕、こんな人だよ?』

『知ってる』

『……え?』

 

初めて想いを告げた時、あの子は困った顔でそう言った。

「お人好し」だということは知っていた。

でも「好き」なことにそんなことは関係なかった。

だから告白をしたのに、あの子は「僕といても利益なんてないよ?」なんて言ってくるから少し腹が立った。

だから噛み付いた。

『やだーっ!』と嫌がるあの子を無視して噛み付いた。

『やだぁ』と嫌がるあの子を無視して噛み付いた。

『やめてよー』と嫌がるあの子を無視して噛み付いた。

それでも本気では嫌がらないから、私は嬉しかった。

でも……「愛してる」って伝えた時は困った顔をしてた。

……。

なんで?なんでなの??

もう1回聞けば答えてくれるかな?

なんて思ったけど、私はあの子のことに関してだけは頭が働かないらしいから困ってる顔も可愛いとしか思わなかった。

 





モノの証。
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