昔も今も。
いま思い返しても可愛らしいガキだった。
美しい青鹿毛の髪に青い瞳。
ふくふくとした頬っぺたは食べてしまいたいほどで、そんなガキが自分を一身に慕ってくる姿に、俺はメロメロだった。
しかし、そのガキはある日を境に、俺を避け始めた。
理由は分からないが、とにかく俺を避け始めた。
俺はガキに嫌われたと思い、絶望した。
とはいえ、もうその頃には幼から大まで一貫の、セキュリティが整った有名私立校に通うことが決まってきたのでスパッと切り替えた。
あちらで親しい友人もできるだろうし、と。
閑話休題。
「…先輩」
「へいへい」
思考を巡らせていると不機嫌ですと言って憚らないオーラで後輩-【飛行機雲】から声をかけられる。
いくら広いベッドとはいえ自分を抱き締めて離さない後輩に「あついって」と言おうにも、この後輩は俺より身長が10センチ以上も高く、体重もその分俺よかあるので抵抗できない。
俺は諦めて後輩の体温に包まれながら、再び思考を巡らせた。
……しかし、この後輩はなぜ俺に懐くのだろう?
いや、懐かれること自体はいいのだ。
可愛いし。
しかし、俺は別にこの後輩に対して何か特別なことをした覚えはないのだが。
…いや、まぁ。
(コイツがあのかわいこちゃんだとは)
親父からそのことを伝えられた時はたいそう驚いた。
友人ができたんだ、後輩なんだけど…と名前を教えれば、「【飛行機雲】くん?懐かしいね」と。
懐かしい? と疑問に思ったが、すぐに合点がいった。
───【飛行機雲】があの可愛らしいガキか、と。
確かに言われてみれば面影があるし、何よりあの日までのあのガキは今の【飛行機雲】に負けず劣らず俺に懐いていた。
……いや、でもまさかなぁ……。
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あのころの先輩は、とても美しい子どもだった。
切れ長の目に、美しい芦毛の髪。
まるで西洋人形といっても過言ではない、生物から外れた美。
僕はそんな先輩に子どもながらに一目惚れした。
…考えてもみてほしい、齢一桁の子どもの前に出していい美貌ではなかったアレは!
今の年齢でも道行けば面倒な…ゲフンゲフン、を引っ掛けてくる容姿だというのに、だ! ……とまぁ。
そして、今に至るわけだ。
そんな先輩に、なぜ今もこんなに懐いているのか?
……そんなのは決まっているだろう?
(僕が先輩を好きだからだよ!!)
「…うるせぇ」
「あうっ」
「視線がうるせぇ」
「喚かないだけマシでしょう」
「喚いてたら部屋から追い出してた」
「やっぱり」
「やっぱりじゃねンだよ。おら、メシ作るから離せ」
子どもにあんな美人見せちゃダメだよ…っていう。
まぁこの場合は被害者【飛行機雲】だけだからまだいいけど…。