あなたはわたしのことを、
(俺のこと好きだなんて、変な人)
この前された告白に、頭を悩ませる。
告白してきた相手はそういうのに疎い俺でも知っているこの学園のOBだ。
現役時代いくつもG1を獲り、コンスタントに活躍していた。今は引退して、時おり解説者としてレースに携わっているのを見る。
俺はそんな人とは縁がないと思っていたし、まさか自分がそんな人に告白されるなんて夢にも思っていなかった。
でも、あの人が俺を見る目はとても真剣で。
その目に見つめられると、俺は動けなくなってしまった。
そして今日も、あの人は俺の前に現れる。
*
今日は休日で、学校は休みだ。
だから俺は学校内に併設されている資料室に籠ってレース研究をしていたのだが……、
「熱心だね、感心感心」
「…」
そう声をかけてきたその人に呆れた目を向ける。
いくら大人で自由な時間があるからといって、ここまで来なくてもいいだろう。
俺はため息を吐く。
この人が資料室まで俺に会いくるのは初めてではない。
俺がここに籠って研究をしていると分かってから、この人はいつもやってくるのだ。
そして、俺の邪魔にならない程度の距離に座って俺を見つめてくる。
……正直、とてもやりづらい。
でも、この人が俺を見つめる目に嫌な感情はないので、俺はそれを無下にできなかった。
だから今日も俺はこの人の視線を気にしつつ研究をする。
でもやっぱりやりづらくて、少し休憩しようと伸びをしたその時だった。
「ねぇ、」
「…なんです」
「この前の、考えてくれた?」
『この前の』。
何がと聞かなくても分かりきった話だった。
初対面から、何故かこの人は俺のことを好意的に見てきて、あまつさえ告白してきた。
はじめは、単なる担当してもらっているトレーナーが同じで、それで顔を合わせただけ。
ただそれだけだったのに。
気づけば休日になるたびに何処そこへ行こうと俺みたいな年頃の学生が好きそうな料理を出す店とかに、色んな所へ連れ回されていた。
別にそのこと自体は嫌ではない。
むしろクラスメイトたちと話ができるようになったので有り難くはあるのだが。
「さて?なんのことでしょう?」
「…そ」
『この前の』の話に知らないふりをするが。
……この人、俺のこと好きすぎないか!?
年齢差もあるし、俺自身まだ結果らしい結果も出せていないしで釣り合いも何もないというのにとんでもなくグイグイ来る!
最近はなんとか話題を逸らそうと頑張っているけど、この人のニコニコ笑顔に誤魔化される。
……やっぱり諦めないよなぁ、この人。
さっきの一旦休憩から再開してもう二時間ほど経つが、この人は飽きもせず俺を見つめている。
(なんで、こんなにも俺のことが好きなんだこの人…?)
でも、拒絶できないんだよね。