そういう運命だったから!
あの子と出会ったのは穏やかな暮らしに慣れきった頃だった。
慌ただしかった"仕事"からも引退し、のんびりと過ごしていたところやって来た新入り。
かつての俺のように"仕事"をするわけではなく、『こうろうば』として幸せな余生を過ごすようにと。
とはいえ、あの子はとても人気だったようであの子に会いにたくさんの人が来ていた。
親族のようにG1は勝てなかったが掲示板入りは何度もした、G2G3レースなら引退まで毎年勝っていた、そんなあの子を人々は気に入っていた。
まぁ、俺はめちゃくちゃピンパーだったから…。
そういえば前、俺に乗ってたアイツが会いに来てたっけ。
あの頃よりも老けたアイツが言うに、あの子にもアイツが乗ってたらしい。
「先輩だからやさしくしてやってくれよ」なんて言われなくても分かってらぁ。
『せんぱい!』
『おー』
あの子は、大人しくて、それでいて慣れた相手にはすごく懐いてくる馬であった。
この場所にいる馬に満遍なく懐いていたが、その中でも一番初めに知り合った俺に一番懐いてきた。
俺も、あの子が可愛くて仕方なかった。
けれど。
「……」
あの子は、あっけなく死んだ。
あの子の家系を鑑みても早すぎる死だった。
病気や怪我などではなく、ただ単の寿命。
何の違和感もこちらに与えず、まるで眠っているかのように、穏やかに。
…あの子が死んでから、俺は抜け殻のようになっていた。
元から年寄りだったのもあって、気づけば俺もあの子の後を追うように寿命で死んでいた。
そして、ふと目が覚めたら……この姿の俺になっていたんだ。
これは全部夢だと思ったし、そうだったらもしかするとあの子と会えるかも、なんて。
どこか見覚えのある出来事をなぞって、それなりの成果を出して引退して、
「よろしく、お願いします」
そして、また。
*
この体になって分かったことだが、どうにもあの子は若い頃から無茶するタチだったようだ。
しかもそれを周りに悟らせず、当人すらも無理をしていると自覚していないようだからタチが悪い。
……いや、自覚はしていたんだろう。
ただ、それを"普通"だと思っていただけで、その異常性に気付けなかっただけで。
だから俺はあの子が無理をする前に止めるようにしたし、周りがそれに気付けるよう手を貸した。
……まぁ、今の俺は大人で休日のあの子しか知らないから、それが上手くいったのかは分からないが。
けれど少なくとも今、あの子は俺の目の前にいて「疲れた」と弱音を吐いている。
"前"では聞けなかったその言葉に思わず目頭が熱くなるのを感じたが、欠伸をするフリでしのぐのだった。
まぁ、そういう運命にするって話なんですが。