【領域】が出た時だけ会えるあなた。
なんでこんなにも必死なんだろうと思った。
この運命を選んだのは僕なのに。
いつまでも覚えていると僕と同じように、あの子もずっと覚えていて。
何度でも僕を救おうとして、救えなくて。
「なんで、なんで…!」
今回は病死だった。
あの子には伝えないでと、「元気だよ」と嘘をついてあの子を送り出した。
こうして何度も突き飛ばしているのに。
僕が終わる時は変わらないから、…さっさと諦めてよ。
「ひさしぶり」
「…」
今回は病院まで来た。
わざとってわけじゃないらしいけど、ここまで来ると怖い。
子どもにしては慣れすぎた手つきで車椅子を押してくれる様子を周りは微笑ましいものを見る目で見ているけど。
「…普通の友だち作りなよ」
「僕の友だちはキミだけだよ」
「……うそつき」
知ってるんだよ、僕は。
キミは僕だけしか見ていなかったけど、キミを見ている人はたくさんいたんだ。
ほら、僕が死んだ後だってそうだったろ?
…まぁ、それでもキミは僕しか見てなかったんだけど。
(手放さ、なくちゃ)
しかし今生も僕は天涯孤独で、結局やさしいキミの両親に引き取られるのだろう。
こんな満足に動けない僕の病室に誰かしら毎日来てくれて、放っておいてくれなくて。
いずれ傷つくから来ないでと言っても、言うことを聞かない彼ら。
「今度こそ、一緒に生きよう」
「無理だよ」
やさしい貴方。
やさしい貴方が傷つくのを見たくなくて、それでもたくさん傷つけるのに。
傷つけても傷つけても貴方は変わらず僕を愛するものだから。
(あぁ、嫌だ嫌だ)
*
アイツの目に映るのはいつだってあの死人だった。
アイツの義理の兄弟で、アイツに大切にされてる唯一。
死人はいつも病弱で、なぜトレセン学園にいるのか分からないほど、保健室にずっといた。
それがレースに出始めたなんて知った時は驚いたし、とんでもない勢いで勝ち上がってると聞いた時は耳を疑った。が、
(お前さえいなければ)
あの死人は、ダービーを勝って死んだ。
アイツと同時にゴールに飛び込んだ頃には、疾うに心臓が止まっていたらしい。
呆然とするアイツを後目にトレーナーやら職員やらが大わらわで、ウイニングライブも中止になった。
『ダービーを勝つために生まれてきたウマ』はそう、呆気なく死んだ。
───誰もの目に焼き付く、鮮烈な光を残して。
アイツの目に離れない光を残して。
「あの子が欲しいって言ってたんだ。だから勝たなくちゃって」
「ああ、早くあの子に会いたいなあ!」
なら、ずっと強くいなくちゃね。