気づいた時には遅いように。
親友と再会した。
しかし親友は牝バとなっていた。
「久しぶりだネ」
「…おう」
親友は美しかった。
どこか掴みどころのない月のような美しさで、惑わせるようでもあり。
だが、
「なら、一緒に住もう」
相変わらずの無防備さ。
いくら俺たちが親友だからといって、年若い男と妙齢の女であるというのに一緒に暮らそうなぞ。
「こんな傷だらけの女に興奮するヤツなんていないヨ」と冗談を聞いた時のようにアイツは笑うが曲がりなりにもいずれ町一番の美人と称される娘の親である。
───傷があっても関係ないとばかりに邪な視線を受けているのが分かってないのだコイツは。
元より暴力が強いのも災いしている。
自分が抵抗すれば何とかなると、そう考えていそうだ。
……まあ、その暴力も今は。
「なぁ」
「なぁに?」
牝バとなった親友はあの頃と比べると随分と穏やかだ。
いきなり何処かに行ったりしないし、基本家の中にいる。
その分、俺と一緒の時間も長い。
「……」
…だが。
この生活は、もう終わるだろう。
だからその前に言っておきたいことがあるんだ。
……なあ、親友よ。
お前はさ、お前がいなくなっても俺は大丈夫だと思ってたんだろ?
なら、そんなのは思い違いだったと、そう言わざるを得ないな。
だって俺はさ、お前がいないと駄目なんだ。
だからまあ───そろそろ俺のものになってくれよ?
「分かってんだろ?」
後ろからゆるりと抱きつくと震える背。
それから振り返って目を逸らして、おどけた冗談を言う。
色素の薄い肌が色づいて、チラチラとこちらを伺う。
……ああ、もう、本当に、お前ってやつは。
その反応が俺にどう思わせるか分かってないんだろうな?
……まあ、いいさ。
お前がそのつもりなら、俺も遠慮なんてしないから。
だから───覚悟しろよ?
(…とはいえ、)
相変わらずなこってと舌を出す。
親友の後ろに鎮座する…美しい小柄なウマを見て。
案の定、親友を愛するアイツは今回も守護霊をしている。
一歩間違えれば悪霊に傾きそうなぐらいの想いを親友に向けて。
親友はそれに気付けない。
……まあ、気付こうが気付くまいがアイツは親友の傍から離れるつもりはないんだろう。
……まったく、本当に困ったもんだと肩を竦める。
(……ま)
それでもいいかと俺は笑った。
何故ならば俺は知っているのだ。
親友が俺を見る目と、アイツを思い出す目が同じことを。
だからいつか───その想いに気付く日を待ってやろうじゃないか。
そう考えて俺は今日も今日とて、親友の傍で『ただの友人』としての仮面を…。
あなたをつかまえたいの。