さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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白峰おじさん(あいぼう)』とはまた別の位置で、自分と対等に()()()()()()相手が欲しいんだよね…。



『登り詰めるヒロイン』

ヒロインになりたい。それが私の夢だった。

漠然とした夢だろう。

だが、私の父だけは、私の夢を笑わなかった。

 

「ヒロインになりたい、かぁ…」

「お父さんはどうすればヒロインになれると思う?」

「そうだなぁ」

 

父は、基本的に優しい人だった。

兄弟姉妹が悪いことをしても、怒鳴ったりはせずに静かに諭す人だった。

けれどほんの少しだけ、

 

「全部を踏み潰せばなれるよ」

 

怖いときがあった。

父の目は、言葉はいつも真剣で。

彼の子どもである私たちがその言葉を疑うことはない。

そもそも、疑うことすら()()()()()

 

「一番になるっていうのはね、それ以外の人がいるってことなんだ」

「父さんもね、世界一ってやつになっちゃったから、そういうのよく分かってるんだよ」

「一番になるためにはたくさんの人を踏み潰さなくちゃいけない」

「一度そう決めたら振り返っちゃいけないし」

「そのせいで起こったことを嘆いてもいけない」

「許されるのは、そう…ただ進み続けることだけ」

「何もかもを踏み潰して、それでも嗤って夢を信じるんだ」

 

そう、そこまで言って父の言葉は止まる。

それに思わず息を吐いた。

気づかない内に緊張状態になっていたようだ。

バクバクとうるさく鼓動しはじめる心臓を抑えていると隣に座る父が心配そうな顔をしていて、

 

「もしかして、またやっちゃったかい…?」

 

父のプレッシャーは無意識だ。

現役時代の父の相棒であったトレーナーいわく、このプレッシャーは昔から変わらないらしい。

無言でこんな圧を出してくるから周りから怯えられたりしていたという。

父としては自らの子どもを怖がらせるのは本意ではないため、いつもこうやって落ち込んでいるのだが。

しょぼくれている父に大丈夫だから、と声をかけて話の続きをうながし、

 

「もう大丈夫かい?ホントに?」

「……なら続きだね」

「つまり一番になるっていうのは、『何か』になるっていうのは、そういうことなんだ」

「…まぁ、大抵の存在はその『何か』にすらなれないのだけど」

「でも」

 

 

 

僕の子どもたるキミならなれるだろ?───なァ、クライムヒロイン?

 

 

私の目を見据えて、父が嗤う。

ケラケラ、ケラケラと、悪魔のように。

()()()()()()()()()()?と嗤っている。

普段はとても優しい父に、ふとした時に現れる"狂気"。

普通ならそれを恐れるのだろうが、

 

 

「も ち ろ ん で す と も !」

 

父により、その血を与えられた私たちは恐れない。

逆に父からそう期待されたことに嬉々として嗤う。

父は、期待しない存在には一ミクロン足りとも興味を示さないのだ。

だからこうプレッシャーをかけられているのは()()()()()()()ということに他ならない。

 

「…ふふっ、大きくなったねぇ」

 

私にプレッシャーを掛け返された父がくすくすと笑う。

本当に、本当に嬉しそうに。

だが、薄らと開いた、その目は、

 

「ほんとうに…おおきくなったね

「…っ、」

 

一縷の光も、通さないまま…。





登り詰めるヒロイン:
クライムヒロイン。父シルバーバレット、母父クライムカイザー。
2000年生まれ。黒鹿毛の牝馬。

主な勝ち鞍:
阪神JF(2002)
NHKマイルカップ(2003)
優駿牝馬(2003)
香港マイル(2003・2004)
ムーラン・ド・ロンシャン賞(2004)
ジャック・ル・マロワ賞(2004)

つ お い 。 (確信)
オークスを勝ったことから一応中距離適性もあるがただただマイル適性が高過ぎた牝馬。適正短CマA中D長Gみたいな感じ。
マイルという舞台に関しては銀弾産駒随一であり、最強格と見なされている。
そしてやっぱり同期のとある牝馬たち(【今でも愛してる】さんと【賞賛のグルーヴ】さん…)に激重感情抱かれてる模様。
本ウマは気がついていないが。

引退後は【聖剣の切れ味】との間にトツカノツルギなどをはじめとする名剣・名刀の銘を冠した産駒を多く成した。
産駒は基本的に短・マイル寄りの子が多い。


僕:
ナチュラルに自らの子にプレッシャーをかける系パッパ(けれど子は父からのプレッシャーを大喜びするものとする)。
地味〜に自分の子たちを"獲物"扱いしてる。
元気に育て〜という気持ちと美味しく育てよ…というふたつの気持ちに揺れていたりする…らしい。

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