銀弾の言う"絵"は塗り替えた者の"
……大人になったキミは、どんな絵を描くだろうか。
僕が生まれた時点で、父はお年寄りだった。
『リペインタ』
その中でも、僕は結構可愛がられた方だと思う。
父の血を持つ子どもの中で久しぶりに"シロガネ"の名を冠された子どもだったから。
他の家に引き取られることが多くなった父の子どもたちで久しぶりに本家に引き取られた子どもだったから。
『リペインタは、どんな人になりたいの?』
父の膝に抱かれ、見たのはどの兄姉のレースであったか定かではない。
それほどまでに自分の兄姉は活躍していたのだ。
三冠競走もグランプリも天皇賞も、ましてや海外だって。
残されたビデオだけでも部屋ひとつを優に超える数で。
父に手を引かれながら見た展示室の優勝レイもカップも如何ほどの数だったか、分からない。
『…ぼく、とうさんみたいになりたい』
幼き日の己が答えは父の血を持つ者であるのなら必ず一度は言う文言であった。
あまりにも聞き飽きただろう言葉だろうに、父は『そっか』と優しく微笑んで、
『でも、お父さんはリペインタに絵を描いて欲しいなぁ』
ぽつりとそう言った。
続けて『リペインタの絵はとても素敵だもの』とも。
『親の欲目もあるだろうけど、お父さんはリペインタの描く絵が好きだよ』
それだけを、ただ覚えていた。
何度走っても勝てないまま。
周りからバカにされ、憐れまれながら。
走って、走って、走って、諦められなくて。
その先で、
「…そっか」
「はい」
「こんな老いぼれでも、子どもひとりくらいは養えたのだけど」
一度も勝てぬまま引退した自分は海外へと招集された。
父の血を求めるのなら他の兄姉に要請しろと再三言ったのだが熱烈なオファーを受けたが故に。
残念そうにする父に申し訳なさから沈んだ声で謝罪する。
「でも、よかったよ。リペインタを見てくれる人がいて」
「…、」
「僕にとっての、
笑う父が「ちょっと待ってて」と言って奥へと消える。
そうして数分後、戻ってきた彼の両脇には、
「はい、餞別」
「え…!?」
「…要らなかったら他の誰かにあげなさい」
大量の高級画材があった。
100色以上の色鉛筆に油絵具、パステル…etc.
そのどれもが目を見張るほどの値段だと知っていた自分は、何度も父を見た。
「ぃ、いいんですか…?」
「うん。…言ったでしょう?」
─────お父さんは、リペインタの絵が好きだって。
慈愛の笑みをもって微笑む彼の手から積み上げられていく画材。
ひとつひとつ丁寧に置かれていくそれに、彼は、
「…ヒマな時でいいから、絵葉書でも描いて送ってよ」
そう言って、愛おしそうに僕を見つめて…。
塗り替える者:
シロガネリペインタ。絵を描くことに才能がある。
銀弾産駒晩年の競走馬であり、銀弾直系の中でも久方ぶりに"シロガネ"の冠名を与えられたことで有名だった。
そこからウマ軸では久しぶりの本家の子として銀弾にベタベタに可愛がられている。
銀弾にめちゃくちゃ目をかけられており、日本にいたころはふたりだけで一緒にレースを見たり食事に行ったりしていた。
引退後、海外行きが決まった際に父である銀弾から餞別として大量の高級画材をもらう。
『父のようになりたい』と願いながらもなれず、他の
ちな海外行きした後は父が褒めてくれたことを糧に画家となっているが、リペインタージュニアをはじめとする子どもたちが大活躍していくためにてんやわんやすることとなる。
いちおうシロガネカイコウ(2012生まれ)より歳下。
僕:
シルバーバレット。
"シロガネ"一家の頭領であり、はじまり。
シロガネリペインタが描く絵が大好き。
幼いころから絵をもらっては大切に保管している。
その大好き具合は暇さえあればリペインタから絵葉書が来ないかなとソワソワしているくらい。
なお他の産駒たちからどう見られてるかは…?
産駒たち:
別の方面から僕に見てもらえる塗り替える者に…?
塗り替える者自身は競走能力がほぼ無きに等しかったのにその子どもがものすご〜く大活躍してるのにもちょっとばかし思うところが…?
ずいぶんと歳下の弟にこんな感情抱いちゃいけないって、分かってるんだけどね〜…アハハ。
それはそれとして
気付かれないように隅からじっ、と見つめているらしい。
───え?絵葉書を破るワケないでしょう?父さんが楽しみにしてるのに。
…でも、まぁ。少しばかり隠したりは、するかもしれませんが。