さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どれほどの時が経とうとも。
変わらず牙は研いでおけ。
いつか現れる、"獲物"のために。



Jr.の滞在

リペインタージュニアはその日、日本へと訪れていた。

ジャパンカップに出走するためである。

やはり気候が違うな…と思いながら降り立つと声がかけられる。

どこかのインタビューだろうか、と声のした方に目を向ければ、

 

「よく来たね、リペインタージュニア」

 

誰よりも、小柄な影がそこにあった。

幼き日から飽きるほど見てきた、姿がそこにあった。

優しい我が父の、そのまた父。

偉大なる祖父-"シルバーバレット"。

 

「ハ、ジメマシテ…」

「あぁ、はじめまして」

 

微笑む彼は年齢を考えるととても若々しい。

じっと見て、やっと「あ、ここにシワがある」と分かるくらいで。

楽しげに歩いていく祖父に着いていきながらリペインタージュニアはそんな風に思考を飛ばす。

 

「さ、乗って」

「ハイ」

 

空港から駐車場に移動するととある車に案内される。

運転席にいるのは父が言っていた長兄の叔父だろうか。

たしか名前は…"シロガネハイセイコ"、だったっけ?

 

「父さん、迷子にならなかったんですね」

「ならないよ!?父さんのこと何歳だと思ってるの????」

「いえ、父さんが迷子になるとは思ってないです。

迷子センターに連れていかれなくてよかったですね、って話です」

「それでも結構なこと言ってるよねぇ!?」

「…でも、事実でしょう?」

「う、」

「聞いてるんですよ?娘のシロガネリリィから。

前、デパートに孫組を連れて遊びに行ったら善意で迷子センターに連れていかれてたんですって?」

「い、言わないでぇ……言わないでよおじいちゃんの恥ずかしいことを…あの子たち…!」

 

何を言っているのかはあまり分からないが、それをBGMにうつらうつらとする。

 

「……zzzz」

 

 

「やぁ」

「…、」

「着いたよ。荷物はハイセイコたちがもう持っていってくれているから後はキミが降りるだけ」

「ァ、リガト、ゴザイマス…ふぁ」

 

手を差し出してくるのを掴んで立ち上がる。

その折に車の天井に頭をぶつけたのは痛かったが。

 

「あの子は、…シロガネリペインタ(キミのお父さん)は元気かい?」

「ハイ、ゲンキ…デス」

「そっか」

 

父のことを聞かれ、元気と答えつつも毎日育児に追われている姿を思い出して遠い目になる。

それを見た結果、何かを察したらしい祖父は「なるほど」と苦笑して。

 

「たぶんご飯もできあがっているからさ。ほら、食べに行こう」

「ハイ」

 

小さな背のあとをついて行く。

この背から、自分は生まれたと言っても過言ではない。のに、本当にこのヒトから生まれたのか、…このヒトがはじまりなのか、と思ってしまう。

こんなにも優しく穏やかなヒトがあんなに強かったのか、と。

そう考えれば、ぴたりと止まる彼の歩。

 

「あぁ…そう言えば言い忘れてた」

「ハイ、?」

「期待してる。…楽しませてくれよ、」

 

───なァ、リペインタージュニア?

 

瞬間、ぞわりと背が粟立つ。

向けられる視線に、チリ…とする。

あぁ、あぁ…!

 

「…ハイ、ワカッテ、マス」

 

父さん。

どうやら、"シルバーバレット(原初)"の牙は、まだ…。

 





塗り替えた者Jr.:
リペインタージュニア。父シロガネリペインタの初年度産駒。英三冠バ。
ものすごくマイペースで目を離した隙によく眠っている。天才肌タイプ。
父であるシロガネリペインタを敬愛しており、絵を描くのに没頭しては寝食を忘れる彼の世話を焼いているらしい。
なおコイツもコイツで"リペインタージュニア"と名付けられたためか、絵が上手い。

塗り替えた者(オリジナル):
シロガネリペインタ。
海外で画家をしているが子どもたちが活躍し始めててんやわんやし始める。
画材へのこだわりはなく、油絵でもパステル画でも何でもで絵を描いてくる。
たぶん後世で売りに出されたらいちばん高い作品は敬愛する父・シルバーバレットに送った私的な絵手紙。

産駒たち:
塗り替えた者Jr.を歓待しながらも…?
また塗り替えた者Jr.が来るのをソワソワしながら待っていた銀弾にちょっとばかしジェラシー…ッとしていた。
何だかんだ言いつつシロガネリペインタが描いた絵を認めているし、初期作品の絵画が玄関先や家の至るところに飾られている。
ちな飾られる絵画は一定のサイクルで新作に変わる模様。
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