さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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これは、つまらない物語だ。
ありふれた、どこにでもある話だ。
けれど、けれども。
何よりも、『幸福』である話には…。



どうか、

実質夢のようなものだろうとぼんやりとした頭で考える。

あの日、僕は██████。

 

「バレット」

 

貴方がその名前を呼んでくれるたびに、いつになったらこの幸福で、残酷な夢は終わるのだろうかと考える。

…きっと貴方と出会えたこと自体よくできた夢だったのだ。

くだらない、ちっぽけな自分が無い脳ミソで必死に考えついたおとぎ話。

 

「すごいよ、バレット」

 

幕はまだ下りない。

あの日、終わるはずだった夢は途切れないまま白昼夢のように続いている。

あぁ、早く終わってくれ。

覚めろ、覚めろ、覚めろと心の中で叫ぶ。

……そうじゃないとずっとここにいたいと願ってしまうから。

 

 

貴方と出会えてよかった。

それは本当のこと。

貴方と出会わなければよかった。

この気持ちも、本当のこと。

 

貴方が僕を見出さなければ、きっと僕は楽になれたでしょう。

貴方が僕を見出さなければ、きっと僕は暗い暗い闇の中にいたままだったでしょう。

貴方が連れ出してくれた光の世界は焼き消されそうなほど熱くて、辛くて、それでいて楽しくて嬉しくて幸せで。

 

でも、あの日のことを思い出すと、貴方を裏切った日のことを思い出すとどうしても涙が止まらなくなる。

 

「バレット…?」

 

あぁ、そんな優しい目で僕を見ないで。

貴方を裏切った、悪い人を、そんな目で見ないで。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

もう戻れないのに、帰れないのに。

 

それでいいんだって思ってた。

そうすれば貴方が幸せになれるのだと、思っていた。

僕なんていなくても貴方は幸せになれるのだって、思って、思い続けていたんです。

そうしないと辛くて、苦しくて。

 

『幸せ』になるのが怖かった。

"運命"が僕から何もかもを奪っていこうとするから、貴方だけは奪われたくなくて僕が代わりになったのです。

僕が傷つけば、傷つけば傷つくほどに、貴方が幸せになれると思っていたのです。

 

これが勘違いならよかった。

何かに化かされた話ならよかった。

僕が何も才能がない、ただの木偶ならよかった。

貴方に、僕を見つけ出してくれた貴方に報いたいと思ってしまったから。

報いることのできるほどの才能を持っていたから。

 

辛い、辛い、辛い。

『幸せ』が辛い。

いつか終わることを知っているのが辛い。

貴方の笑顔を奪うことが、そんな未来が憎い。

"運命"が僕を嫌うのが憎い。

僕を滅せないのなら貴方に害を成そうとする世界が憎い。

 

でも、でも、それでも。

僕は貴方を選ぶのでしょう。

貴方のことが好きだから、貴方のことを愛しているから。

こんな僕を、見つけてくれてありがとう。

 

「さようなら、先生」

 

だから、

 

 

【シルバーバレットは還らない】





笑って。


───すべてを()()()いる"誰か"の話。


あちらが立てば、こちらが立たずで。
天秤は平行にならなかった。
そんな世界。



"誰か":
『愛』のためなら犠牲になれる。
『愛』を亡くすのが怖かった。
だから。

───選びとった答えに後悔はない…ハズ。


『愛』:
"誰か"にとっての。
"誰か"にとっていちばん大事な存在。
『愛』のためなら何でもできる。
『愛』の言うことなら何でも叶える。
けど。

───そのまた逆も然り、なのだ。

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