さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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写真話譚。




"あなた"のことを

今度トレセン学園に入学する弟を連れて、祖父の家を掃除しにきた。

祖父は、基本何をしているウマか分からないが結構な資産家であるらしくその分家屋が大きく所有物も膨大だ。

そのため時折は誰かが掃除やら整理やらをしに行かねばならず、というわけで今回白羽の矢が立ったのが私たち姉弟…と。

 

「姉さん、どうすればいいのかな」

「とりあえず要らなさそうなものを避けとけばいいみたいよ、スーちゃん」

「はぁい」

 

弟である"スーちゃん"-サンデースクラッパが黙々と整理し始めたのを後目に、携帯が鳴ったので一時離脱する。

 

「はい。あ、リリィ?うん、うん…分かった。帰りに買ってくるね」

 

電話をとると相手は母であるホワイトリリィで、どうやら料理に使う食材で足りないものがある…とのこと。

それに買って帰ると返答して、スーちゃんのいる方へと戻った。

すると、

 

「…スーちゃん?」

「!…な、なぁに、姉さん?」

 

なにかの紙片に、目を奪われていた弟。

声をかけると慌てたようにポケットに紙片を突っ込んだ彼を、私は一時、見逃した。

はやく整理を終わらせて、そのあと聞けばいいだろうと。

だが、あれこれ整理をしているうちにそんな思考はどこかへ行ってしまうもので、件の紙片について思い出したのは家に帰りついたあとだった。

それも、

 

「ねぇ、姉さん」

「なぁに?」

「このヒトって、誰?」

 

夕食を食べ終わったあと、皿洗いをするリリィに聞かれないようにそうっと告げられた質問。

その手の中にある紙片には…、

 

「さ、ぁ?知らないわ」

「そう…?」

 

紙片は、写真だった。

全部捨てたと、捨てられたと思っていた、写真だった。

写真の中にいるのは、嬉しそうに笑うまだ歳若い…。

 

「姉さん?」

 

心配そうな弟の声にハッ、と意識を現実に引き戻す。

そして自分でも誤魔化しているとしか思えない声音で「さ。お風呂が沸いているから入ってきなさい」と背中を押した。

 

「え?まだ早くないかなぁ?」

「でも、今日遠出したから疲れたでしょう?」

「…うん」

 

 

祖父の家の整理で、見つけたその写真に僕は視線を囚われた。

穏やかに笑う、火傷顔のそのヒト。

よくよく見て芦毛だと分かるその髪色に、よく青鹿毛と間違えられる僕は親近感を覚えて。

わけも分からないくらい惹かれた。

勝手に持ち帰っては駄目だと分かっていながらも、写真を持って帰ってきてしまうくらいに。

 

「スー!」

「なぁにー?」

「出ていく前に仏壇ー!!」

「はーい!!」

 

あぁ、忘れていた。

外に出る前に挨拶して行かなくちゃあ。

 

「じゃあ"兄さん"、行ってくるね!」

 

それにしても、写真のヒトって何だか、"兄さん"に似ている気が…?

 

 

…あの子は気づいていない。

だって、あのヒトがいたころは、

 

『…大きくなりなよ、スー』

 

命の宿ったリリィの腹を優しく撫でるあのヒト。

やわらかに微笑むたびに、顔に焼き付いた火傷跡がゆるく歪んでいたのを、今も覚えている。

 

『待ってるからな…』

 

 

「…兄さん」

 

仏壇に飾られている、写真を見る。

この家に残っていた兄の写真は、火傷を負う前のものばかりだったから。

サンデースクラッパ(あの子)は何も知らないの。

 

「私だけが、知ってるの」

 





【戦う者】:
サンデースクラッパ。何も知らない。青鹿毛だと思ったら芦毛だったウッマ。
祖父(ホワイトバック)の家で見つけた写真に写るヒトに目を惹かれた。
何故かは分からないけど写真を無断で持って帰ってきてしまうくらいには惹かれてしまっている。

【戦う者】の姉:
シルバフォーチュン。すべてを知っている。
祖父の家にあったという写真に一時停止した。
すべて捨てたはずだった、唯一、残っていたのがあの写真だったはずだ。
…けど、写真が残っていてホッとしてもいる。


写真の主:
お兄ちゃん。顔に火傷がある。
よくよく見て芦毛と分かる毛色だった。
妹であるシルバフォーチュンのことを大事にしていたし、当時ホワイトリリィのお腹にいた弟のことを、とても楽しみにしていたという。
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