さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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──きっといつまでも、刻み、遺される。



可能性が、見たかった

幼子に囲まれているのは年老いたウマだ。

男女問わず囲まれては聖徳太子もかくやという勢いで喋りかけられながらも、その年老いたウマはおだやかに話を聞いている。

すると、

 

『ねぇねぇ、じいちゃん!』

『ん〜?』

 

ひとりの、元気のいいウマが声をかけた。

どうやら、この囲む子らは年老いたウマの孫に当たるらしい。

…いや、その中には曾孫も混じってはいるのだが。

 

『じいちゃんさ、むかしスゴいウマだったってホント?』

『ん〜、』

『まっさかぁ!』

『おじいちゃんほけほけしてるもん。そんなワケないよ』

『え〜。でもおれの父ちゃんが()()()()()()っていってたもん!』

 

きゃあきゃあと興奮して話す子どもたち。

嘘だ、嘘じゃないと話が白熱していくのを喧嘩になる前に止める年老いたウマ。

 

『こらこら。いっかい落ち着きなさい』

『だって!』

『キミも言いすぎだよ?』

『う…』

『ごめんなさい、できるかい?』

『……いいすぎた。ごめんなさい』

『…ん』

『いい子だね。ふたりとも』

 

仲直りができたふたりを年老いたウマが撫でる。

それを見て僕も、私もと他の子どもたちが群がってきたところで。

 

『…それにしても。なんでキミのお父さんは僕の話をしてたの?僕とキミのお父さんってそこまで面識が…って、あぁそういうことか』

『そういうこと、って?』

『キミのお父さんが勝ったレースを、僕も勝ったことがあるって話だよ』

『え〜!』

『ホントぉ!?』

『ねぇねぇ、なにのレースにかったの?』

 

子どもたちの目が、興味津々というように光る。

その目を向けられたウマはフッ、と笑うと、

 

『ジャパンカップ、って言うんだ』

『へ〜』

 

子どもたちの反応は大体が同じ。

まぁそれもそうだろう。

まだ、レースの厳しさを知らないから。

走ることが楽しいと、まだ純粋に思える子たちだから。

 

『じいちゃんがかてるくらいなら、おれたちもかてるよな?!』

 

そんなことが言える。

…それを、年老いたウマは訂正しなかった。

今の歳から現実の厳しさを教えても可哀想だと。

そう思ったことも嘘ではなかったが、

 

『…うん、応援してるよ』

 

 

遠いむかしの、夢を見た。

夢に出たのは、遠の昔に亡くなった曾祖父。

曾祖父は、おだやかな笑みを浮かべているのが常のウマだった。

だから過去、彼がすごいウマだったと言われても、「嘘だ」と笑い飛ばして。

でも、

 

「嘘じゃあ、なかったんだよな…」

 

今もなお、燦然と残る芝2400mワールドレコード(記録)を叩き出した。

タイムオーバー制度(規則)を変えたとして、教科書に名が記載されている。

…そんな、没した今も人々の脳に刻み込まれている【存在】。

 

「…バケモノめ」

 

そうボヤいた先には、笑う若き日の、曾祖父のポスター(すがた)があった。





おじいちゃん:
孫&曾孫の脳を焼く。
基本ほけほけしているせいで『過去すごいウマだったんだよ〜』と言っても信じてもらえない。
過去、いろいろと(良い意味で)やらかしまくった結果、教科書とかに名前が載って(残って)いる。あと時事問題の方でも記載がある。

孫&曾孫:
おじいちゃんに脳を焼かれた。焦土。こんがり。
『ほけほけしてるじいちゃんがそんなすごいワケ…』と思っていたらキメられるコンボ(生涯無敗&芝2400mWR&凱旋門賞・BCクラシック制覇&産駒成績)。
なんやあのバケモン…(戦慄)。
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