さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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子どものように、無邪気な顔で。

史実での騎手/調教師をトレーナー/チーフトレーナーと考えている人間です。
んでチームは厩舎として考えている。
(例:過去のチームアルデバラン→チーフトレーナー:灰方、所属トレーナー:白峰…みたいな)



"怪物"は笑う

その血筋に連なるウマの、誰もが言う。

 

───自分よりも、あの方の方が"バケモノ"ですよ。

 

自分なんて、とてもとても。

そう言って、謙遜する。

朗らかに笑う者、苦虫を噛み潰したような顔をする者…、それはウマによってさまざまだが、たしかに。

 

───あの方の方が、ずっとすごい。

 

尊敬の眼差しをもって、そのウマのことを、称するのだ。

 

 

「え?そうなんですか?」

 

その話を当の本バにすると、驚いたようにそう返された。

大きな邸宅の、庭に面した部屋での会話である。

ゆるく着流しを纏ったウマは、言われなければその年齢と思えないほど若々しい。

 

「へぇ〜…。僕なんかずっと前のウマですのに、みんな…そっかぁ」

 

茶をずずず…と啜ったウマがしみじみと呟き、置いてあったお茶菓子をつまむ。

 

「キミも食べなよ。というかキミのために用意したんだから」

 

そう促されたのでこちらも口をつける。

…美味しいですね。

 

「あ、そうだろ?先生とふたりで選びに行ったかいあったよ。爺さんふたりでえっちらおっちら珍道中…」

「と、今この話はいいか」

 

こほん、と閑話休題的咳の音がして、

 

「僕が"バケモノ"って…なんか酷いなぁ、みんな」

「でも誉め言葉での"バケモノ"だもんね」

 

ポリポリと頬を掻くそのウマは、少し照れくさそうだ。

もう、仔も孫も、数え切れないほどたくさんいるというのに、その誰もが「このウマを超えられない」と言う。

 

「それにしても、今はいい時代だよね」

 

いい時代?

 

「僕の時はまだ海外遠征に対してのノウハウがなかったからねぇ。それに出るレースも、ね」

 

…もし、

 

「ん?」

 

もし、海外遠征で好きなレースに出られたとしたら、…どのレースに出ますか?

 

「ふぅん」

「なかなか、答えにくい質問を…」

「有名所だったら香港とかドバイかな?」

「香港が現役のとき、出走可能だったらたぶん出てたし」

「あとは…子どもが何度か獲ってるゴールドカップとか?」

 

そして出て、自分か勝てると思います?

 

「…」

「何を当然なことを?」

 

顔をあげたそのウマに、じぃと見つめられて息がつまる。

はく、と自分が呼吸するのに合わせてフッ、とほころぶ口元。

 

「…(ぼか)ァ、無敵の弾丸だぜ?」

「今の子は知らないかもしれないけど」

「出られるんなら」

 

 

───何が相手でも喰らうのみ、だ。

 

 

「あ゛〜、そう言われたら出走したくなってきたなぁ」

「ずっと、気が付かないフリをしてたのに」

 

…やっぱり僕は。

 

「走ることを、"愛している"らしい」

 

くつくつと笑う姿に、やっと心臓が落ち着いて。

その笑顔に、自分は問う。

もし生まれ変わったのなら…?

 

「生まれ変わったら?そりゃあ、もちろん」

 

───相棒と、世界を()()()ひっくり返しに行く。

 

「そうに、決まってるだろ?」





───生まれ変わっても、ふたりで。


【あの方】:
もう年老いて久しい。
けど、闘争心はちゃんとある。
子や孫ができるにつれてレースの選択肢が増えていることを羨ましく思っていた。
……みんな、色んなところに行けていいなぁ。
それはそれとして年老いても(競走に対しての)プライドがお高い。
表面上は穏やかに接しているが一度スイッチを入れられる(煽られる)と『は?誰が来ようとどのレースだろうと僕が勝つが?』モードになる。
(そりゃあ)そうだよね、『運命の相棒』が()()()自分のことを最強って言ってくれるからね。
応えないと、恥ずかしいよね(ニッコリ)。

でもいろいろと(産駒成績とか諸々)手加減しろ
ジジイ!


【あの方】の相棒:
【あの方】とは今も仲良しな元トレーナー現チームアルデバラン・チーフトレーナー。
【あの方】に脳を焼かれた結果、【あの方】が最強なんだ!と言い続けるようになったヒトミミ。
【あの方】と共にあったころに今の技術があったらなぁ…とよく考えてしまう。し、あの時代にこのレースがあったら…ともよく考える。

さすが【あの方】に運命も情緒もぐちゃぐちゃに
されたヒトミミだ、面構えが違う。
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