1993年に起こったとある連続怪タヒ事件についての、後年に書かれた記事。
その、取材記録。
…何人もの人間が、頭を割られて、タヒんでたんだって。
でね、そのタヒ体は、馬に蹴られてタヒんだ時と
…ソックリだったらしいよ?
──その
【インタビュー記録より一部抜粋】
へえ、そんな…言っちゃ悪いがゴシップ誌に書かれるようなネタのためにこんな辺鄙な場所まで。物好きだな、アンタ。んでええっと、なんだっけ?あぁ、昔に起こったっていう連続怪死事件、ねぇ…。
新聞にもそう大きく載ったヤツじゃないんだろ?それを調べに来るなんて、…まぁいいわ。
聞きたいのは"あの土地"のことか?そうかい。とは言っても俺もよく知らねぇよ?俺が子どもン時にはもう既に荒地になって久しかった場所だし。"あの土地"が使われてた時を知ってるのはもう爺ちゃん婆ちゃんくらいの年齢じゃねぇか?って言っても、話してくれないだろうけど。
何でかって?あー…、"あの土地"な、ここいらでは忌み地だって、子どものころから近づくなって、言われてる土地なんだ。アンタも来る途中で見たろ?あんなに広い土地だったら今どき一戸建ての家が数件とか、スーパーとかだって建っててもおかしくないだろ?だよなぁ。でも、建たないんだ。
…"あの土地"が元々牧場だったってのは、ここまで来たんなら分かってるよな?分かってんなら、いいが。そもそも"あの土地"はここらの地主が所有していた土地だった。けどその地主ってのが欲深というか何というか。金を貸していた家にいたある馬に惚れ込んで、借金のカタだって言って、無理矢理かっぱらってきたんだと。それが大正の中頃くらいだとかの話で。
で、当然そのかっぱらわれてきた馬は言うこと聞かないわけ。まぁ、とんでもなく美しい馬だったからさもありなんとは言われてたみたいだけど。
それで、惚れ込んだ馬にその地主はたくさんの子を産ませて。あぁ、その馬ってのはメスだったんだ。爺ちゃんや婆ちゃんが言うにはいつまで経っても、その攫ってきたメス馬が従順になんねぇから似た子を作ろうとしたんだろうって。
けど、何頭も何頭も産まされたそのメス馬はある日ポックリ逝っちまった。
んで、そういった扱いを見てたワケだからさ、そのメス馬から生まれた子馬も、言うこと聞かないの。
だから、躍起になったんだと。狂ったとも、言ってたっけ?
一生自分に靡かなかった馬を取り戻そうとスゲェことしたとか…。たしか近親交配、インブリードって言うんだっけ?
そういうの、したんだと。母と息子とか、父と娘とか、兄妹とか。
その惚れ込んだメス馬に血が近いヤツらで混ぜたって。
けどさ、ソイツら母馬を手酷く扱った地主のことが嫌いだからさ、どれもこれも、ぜーんぜん懐かねぇの。
懐かねぇから杖で殴ったりとか、日常的だったって。近隣の家に、そこの馬が、逃げ込んで来ることがよくあったって。
そんな執念が、いつしか牧場になったって。
これが"あの土地"の
…その土地で、まさかあんな馬がねぇ。
"ある土地":
元々はとある地主が持っていた土地。
何か事件があったというワケではないが地主の執念が籠り過ぎて"忌み地"状態に。
なおターニングポイントは大正の中頃に地主がとある美しい牝馬に惚れ込んだところの模様。
その牝馬は、とても美しい芦毛だった。
雪と見間違うほどに、美しい"白"。
誰が見ても愛されて育ったと分かる、そんな牝馬だった。
けれどある日唐突に、彼女は知らない人間に
攫われた。
彼女は家に、帰りたかった。
けれど…。
元の場所に帰りたかった牝馬は、最期までに男に懐かなかった。
その牝馬に狂ってしまった男は次から次へとその牝馬の血を継いだ馬を作り、それはいつしか牧場となったが、
───猫が7代祟るなら、馬は何代祟るでしょう?