さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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一応2話目を出してみる。


出会い

競走馬になるためにいろいろと試験した。

周りは嫌がっていたようだけれど僕にとっては特段どうともなかった。

人間が示す通りにやることをやって、日常を過ごして。

そんなある日、僕の上に乗るらしい人間と引き合わされた。

優しそうな壮年の男であった。何故だかその男のことが妙に気に入った僕は彼を乗せた。

 

そして、彼を乗せて走って、僕は僕の上に乗るのが彼なら後はどうなっても構わないと思ってしまった。彼以外を乗せるのが嫌になった。

たったの2、3分彼を乗せて走っただけなのに。

 

よろしくな、と彼が口を動かしたのに僕は頷いた。

─こちらこそ、よろしく相棒。

その馬に、シルバーバレットに出会った時、僕は『これはとんでもない馬に出会ったぞ』と思った。

 

周りは歳の割に小柄すぎる彼を心配したり、馬鹿にしたりしていたけれど、彼に跨った僕だけは彼の天賦の才を感じ取っていた。

 

僕という重りを乗せても悠々とコーナーを回る体幹の良さ。

いや、それ以上に凄かったのが彼の出すスピードだ。

しっかりと手網を握っていないと振り落とされそうなのに、彼を見ているテキに話を聞くとあれでも速度を落としている方らしい。

 

よろしくな、と声をかけると彼は自分こそ、とでもいう風に頷き、僕に頭を擦り付けてくるのだった。

レースに出た。自分と同じ歳らしい馬が複数頭いて、結構な数がゲートに入れられるのを嫌がっているのが気配で分かるから早く走りたくてたまらなかった。

 

ゲートが開いた瞬間に飛び出して、僕はぐんぐんと前に進んで行った。

走るのが終わりということに気づいたのは僕に乗る彼が僕の首元を叩いていたから。

 

なんだ、もう終わりかと少し残念に思った僕であった。

時が経つのは早いものでシルバーバレットの新馬戦になった。

 

シルバーバレットは6月の最後の方に産まれた馬であったから気長に育てれば体格も良くなるだろうと思われていたが、どうにも体が大きくならなかった。

だが競走能力には問題がなかったので新馬戦に出すことにしたのだ。

 

シルバーバレットの血統はさほどよくない。父はクラシック二冠馬のヒカルイマイだが血統が純粋なサラブレッドとは呼べないサラ系の馬、母のホワイトリリィは未出走馬であり牧場の存続のために生かされていたと言っていい馬だ。

 

そのためシルバーバレットは人気薄だったのだが、

 

「…キミは速いなぁ」

 

他の馬に影を踏ませず勝ってしまった。完勝といっていいだろう。

減速させると不満そうな顔をされたがいつものように褒めてやると仕方ないとでもいう風に鼻を鳴らしていた。




僕:実は人見知りならぬ馬見知りな馬。
生来耳が聞こえにくいがヒト時代に培った読唇術で人間の言ってることが分かったり…。
騎手くんのことがとても気に入り、騎手くんじゃなきゃ嫌だ!となっている。
脚質は逃げ。だがスペックが良いのに対してハードの方が…。

騎手くん:架空の騎手くん。だいぶ歳がいっている。
まぁまぁ馬を勝たせているがG1(当時は八大競走)には勝ったことがない。
本人の才能も普通にあるが、彼の一番の才能は馬に好かれること。
彼が一心に馬を信じるように、馬も彼のことを一心に信じている。
そのため馬が彼の期待に応えたいと自ずから思い、その馬は才能以上の結果をたたき出すことが多い。
また中々勝ちきれない馬に乗って勝ち、その馬が後々他の騎手で勝つことが多いため『先生』と裏で呼ばれていたりする。
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