さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ダイナミックお邪魔しました!定期


一族よりの忠告

「チビ」

「なぁに?」

「おじいちゃんはお前に話しておかなくちゃいけないことがあるンだ」

 

幼き日の、記憶である。

父母ともに働きに出ていて、祖父に預けられた時の記憶の中のひとつ。

普段から拘束具に包まれた祖父ではあったが、孫であるシルバーバレットにはとても優しいウマだった。

 

「…他人を誑かすのも程々に」

「え?」

「いいか? 他人と仲良くなるってことは、だ。その分だけ自分の身のリスクが上がるってことだぞ。覚えておけ」

「うん……」

 

祖父の言葉は今ひとつ理解できなかった。

だが、その時に感じていた胸騒ぎのようなものは今でも覚えている。

 

「……おじいちゃん?」

「やり過ぎるなよ?やり過ぎたら刃傷沙汰になるからな?閉じ込められることだってあるかもしれねぇ。だってチビは俺ら一族の子だから…!」

 

祖父が震える声でそう言う。

何かに怯えるように。

何かを恐れるように。

それが一体何なのか、幼いシルバーバレットにはわからなかった。

ただ、祖父はこう言ったのだ。

───お前は特別なんだから、気をつけろ。

───他人と関わる時、サシはやめておけ。

───必ず誰かと一緒にいろ。

───そして、もしもそんなことになった時は…………。

 

 

────あの子が欲しい!

────どうしても欲しい!!

────あの子がいれば、私は、()()()は、もっと強くなれる!!!

 

魅入られたのは【何】にだったのか、もう定かではない。

だが、おかしくなってしまったそのウマの前には、静かにそれを見定める影。

 

「一生大事にしますから。欲しいものなら何でも与えますから。だから、ね?ずっと此処にいてください。私たちに繁栄を、救いを…!」

 

狂ったように懇願するウマを前に、影はそっと息をつく。

呆れたようなため息だったが、それでも影は口を開いた。

まるで、慈悲深い神のように。

しかし、告げられた言葉は冷酷そのもの。

 

───あなたたちでは無理です。諦めてください。

───というかそもそも、これが犯罪とお分かりで?

 

それは、正論以外の何ものでもない言葉。

その言葉を聞いて一瞬で狂気の塊となったウマは襲いかかろうとするが、影の方が一枚上手だった。

瞬きの間に、意識を失ったのだ。

まるで眠らされたかのように。

そして、

 

「うんしょ、んしょ……えいっ!」

 

微かな金属音と共に開く窓。

そこからひらりと着地する影。

着地して、ひと息ついたあと、歩き出した影-"シルバーバック"がつぶやく。

 

繁栄(はんえー)とか救いとか言われても、ぼくらはただのウマなのに」

「いちばん初めのウマが、()()()()()()ってだけなのに、なぁ…」





【白の一族】:
またの名を『狂血の一族』。
大正中期頃に成立した家系。
どうしようもなく他人を惹き付け、魅入らせてしまう一族。
なおその発端は一族の原初兼予言のチカラを持っていた"白牝(シロメ)"という牝バにあったりなかったり…?
ちな幼き頃よりピッキングのやり方や護身術を仕込まれる一族でもある。


"白牝(シロメ)":
ハズレなしの預言者としてその名が口伝で伝えられている存在。
本名不明、来歴不明。
がしかし、芦毛の牝バであることは確かであり、その美しい白の毛並みから便宜上の名として白牝(シロメ)と呼ばれていた模様。
普段は物静かな牝バであったがひとたび口を開けば予言を行い、そのすべてを見事に当てきった。
だが若くして夭折した存在であるため、今現在では彼女の血を引く一族が身を隠しながら細々と生きる限りである。
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