さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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実質お兄ちゃん的なものになるシロガネツーパックさん。



擬似きょうだい

『よォ、久しぶりだなジジィ。耄碌してねェか?』

『う〜ん、初っ端から猛烈なジャブ』

 

その日、ダービー馬シロガネツーパックは里帰りしていた。

海外遠征等の疲れを癒すためだとか何だとからしいが、

 

『…でも、元気そうで嬉しいよパック』

 

このジジィがそばにいたら休まるモンも休まらねェっての!

しかしそんな事より気になる事が一つあった。

あの女だ。

いまジジィの隣にいる牝馬()

名前は知らん。顔も知らねェ。

だが……。

ソイツを見た瞬間、俺ァ何故か寒気がした。

何かこう……魂的なモノで感じ取ったンだ。

 

『…あぁ、そう言えば』

 

ぽつりと。

何かに気づいたようにジジィが声を出す。

そしてそのまま流れるように自らの隣にいる存在に声をかける。

 

『ほら、挨拶してみたら?──サイレンス』

『…サイレンスヘイロー』

『うん、いい子』

 

その牝馬()はひどくぶっきらぼうだった。

まるで愛想のない声で、俺に名前を告げる。

……俺は、この牝馬()を知っている。

コイツはこの先、とんでもないバケモノになる。

その可能性の塊みたいなモンを俺は知って()()()()()

なんせ……それは、

 

『そう言えばあの子たちって、彼の血筋だっけ?』

 

 

───仲良くするんだよ。

とは言われていたが、

 

『まさか同じところに帰るとは思わねェよ!?』

 

里帰りが終わり、厩舎に帰ったあと。

気がつけば隣には、

 

『おい、待て。なんでコイツと俺をそばに置く。俺とコイツが異性ってコト分かってんのかおい!?』

 

サイレンスヘイローがいた。

他の馬の話を聞く限り、どうやらニンゲンは俺らを一緒にしておくらしい。

意味わかんねェ。

こいつ、牝馬だぞ。

そして俺は牡馬!

 

『ザッッ、ざっけんじゃねぇぞコラァ!?』

 

思わず暴れそうになったがそこは抑えた。

だって、牝馬()の前だからな。

ここで暴れたら恥ずかしいだろ?

そう思って落ち着こうとした矢先だった。

 

『あの…』

『おう!?』

『どうして…私にやさしくしてくれるんですか…?』

 

心底からの不思議そうな目。

何を言ってんだコイツ?という表情の俺。

それを見てか、サイレンスヘイローは首を傾げる。

────。

なんだ、コイツ。

可愛いところも、あるじゃねェか。

 

『……べ、別にテメェのためじゃねェよ!』

『えっ』

『あのジジィに頼まれたから仕方なく、()()()()優しくしてやってるだけだ。勘違いすんじゃねェぞゴラァ!!』

 

俺の言葉を聞いた途端、サイレンスヘイローの目が変わる。

ふわりと、まるで花がほころぶように。

 

(…うわ)

 

【揺らめいた心音には、知らないフリを】

 

 

『…そろそろキミは、外の世界に踏み出さなくちゃならない』

『うんうん、怖いよね。分かるとも』

『けれど───、』

 

ずっと、あなたのそばにいたかった。

世界というものは恐ろしい。

やさしいあなた。

私のすべてを、受け入れてくれたあなた…"カミサマ"。

 

『大丈夫だよ。あの子は、"シロガネツーパック"は、とてもやさしいから…』





【雷撃の豪脚】:
シロガネツーパック。父エアシャカール母父シルバーバレットの牡馬。
特定の人物+馬の前以外ではとても気性が悪いが意外と面倒見がいい。
里帰り中に成された、馬の中で唯一従うジジィの"オネガイ"により【敬虔なる天使】を任せられる。
そして気がつけば【敬虔なる天使】のお兄ちゃん代わりに。

…よォ。お前いま、アイツを邪な目で見たよなァ?


【敬虔なる天使】:
サイレンスヘイロー。父SS母父シルバーバレットの牝馬。
生産牧場からの扱いによる後天的な気性難で、母父であるシルバーバレットによく懐いている。
里帰り中にシルバーバレットとお話をした結果、外の世界ではシロガネツーパックを頼るようになる。
閉じた世界で過ごしていたがゆえにまっさらな子。
それに母父の因子が入っているので…。


母父:
シルバーバレット。【雷撃の豪脚】からは"ジジィ"と呼ばれている。
子どもを可愛がるのが好きなおじいちゃん。
で、今回は閉じこもりがちな孫娘をちょっと口調は荒いけど面倒見がいい孫息子に任せた。
まぁ、あっちに帰っても相棒がいるから大丈夫でしょ!


ヒトミミさんたち:
厩舎の中でも類稀な気性難である【雷撃の豪脚】のそばに【敬虔なる天使】を置いておくと大人しくなることに気がついた図。

牧場に帰っている間にバレット経由で仲良くなったのかな? By.調教師の男
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