さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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意外と周りから気にかけられてそうな銀弾さん…



気まぐれと銀弾

まだ、チーム:アルデバランが気性難の巣窟と名高かったころ。

アルデバランに所属して日の浅いシルバーバレットに話しかけてくるウマが、たったひとりだけいた。

 

『よォ、』

『え、あ…?』

『まァ、緊張せずに楽にしててくれや』

 

ちょっと髪がボサボサで、右目に眼帯をしたそのウマ。

見るからに年上だと分かるその威容に、少しばかりたじろぐシルバーバレット。

 

『だーかーら、緊張すんなって』

『ひゃいっ!』

『あー、もー』

 

ガシガシと頭を搔くそのウマは、困ったように笑いながらシルバーバレットの頭を撫でる。

大きな手が触れる感触に、シルバーバレットは目を白黒させた。

困惑するシルバーバレットを他所に、ウマは言う。

お前が慕っている【リーダー】…ゴーアヘッドユーの知り合いだと。

あのチームに新入生が入るって聞いてな。

どんな奴なのか興味があったんだわ。

悪いけど、ちょいと付き合ってくれ。

そう言って、そのウマは手を差し出してきた。

戸惑いながらもその手を取れば、思いのほか強い力で握られ、引っ張られる。

 

『あ、あの…』

『安心しろヨ』

 

悪ィようには、しねェから。

 

 

それから。

シルバーバレットはちょこちょことそのウマ-『ジョージ』と名乗られたので"ジョージさん"、もしくは"ジョージ先輩"と呼んでいる、と親交を少しずつ深め始めた。

それはまるで、ラプンツェルを塔の中から連れ出すがごとく。

徐々に打ち解けていくシルバーバレットに対し、ジョージの方からも歩み寄ってきた。

どうすれば速く走れるか。

トレーニングは何が一番効果的か。

走りに関する技術や知識などを教えてくれた。

それは、今になって思えば当たり前のことだったけれど。

それでも、当時のシルバーバレットにとってはありがたかった。

 

『あの、』

『なんだ』

『どうして、僕にここまで…』

『…特段の理由がある訳じゃねェよ』

『はぁ…』

『でも、お前に似てるかもって思ったんだ──あの、"狂気"のヤローに』

 

その時、シルバーバレットは。

目の前のウマにとって、件の"狂気"は忘れられないモノなのだろうと察した。

だから、それ以上は何も聞かなかった。

ただ、感謝して頭を下げたのだ。

ありがとうございます、と。

 

 

そうして。

シルバーバレットは仲間を喪った。

ひどい、それはひどい火事であった。

アルデバランのメンバーが居住しているアパートに起こった原因不明の出火。

その中で競走生活を続けられたのはシルバーバレットたったひとり。

それ以外の数少ない生き残りはみな、シルバーバレットが入院している間にトレセン学園を去っていった。

閑話休題。

 

「……、」

 

かの大火事から生き残ったシルバーバレットの顔、その左半分は大火傷に覆われて爛れている。

それでもシルバーバレットは走ることを諦めず、レースに挑む道を選んだ。

だが、それはそれとして。

 

「やる」

「ジョージ先輩?」

「紐、調整して使え」

 

投げ渡された眼帯をシルバーバレットが使い込むようになり、また定期的に同じ品が送られてくるようになるのはもう少し、あとの話である。

 





僕:
シルバーバレット。
実は日常生活では眼帯を使用していたタイプのウマ。
(火事の後遺症でほぼ見えないため)
しかし基本フードを被って顔を隠しているがゆえに、そのことを知っているのは親しい間柄のごく一部だけな模様。

先輩:
人呼んで【気まぐれジョージ】。
何だかんだシルバーバレットを気にかけている兼ある経歴に少しばかり僕との類似点がある先輩。実は右目の眼帯の下には…?
はじめは舎弟であるアルデバランのリーダー・ゴーアヘッドユーが可愛がっているからという理由で絡んでいたが、火事のあとは所々で献身的に支えてくれるように。
実はシルバーバレットに同期であったとあるウマ("狂気")の面影を重ねているらしい。
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