さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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…さすがの僕も、かの【英雄】に言われたのなら堪えますが。



ナチュラルボーン強者の日常

シルバープレアーは大人しい性格で、いつもニコニコしている…というのが周囲の共通認識であるのだが。

 

「…気が済みました?」

 

放課後の、薄暗い校舎裏。

そこで胸ぐらを掴まれたシルバープレアーの頬は一目見ただけで、そう時間の経たない内に腫れ上がるだろうと分かる程に赤く染まっていた。

それを見て満足したのか、そのまた…なのかは不明だがウマたちのひとりが舌打ちと共に手を離す。

解放されたことで地面に尻餅をつく形となったシルバープレアーだったが、それを気にする様子も無く立ち上がると、乱れた服を整える様に手で埃を払う仕草を見せた。

その表情には…何も()()()()いない。

 

実は。

シルバープレアーがこのようなことに巻き込まれるのはそう珍しいことではなかった。

血筋ゆえか、それとも生来の性格ゆえか。

歳上、それも結果を出しているような方々に可愛がられやすいシルバープレアーは物心ついた時から周りの人々に()()()()()コトをされながら育ってきた。

その結果が今のこの現状だ。

先程のウマたちもそうだし、それ以外でも今のように暴力を振るわれたり、罵声を浴びせられたりする回数は決して少なくは無い。

しかし、それでも尚シルバープレアーは何も言わなかった。

どうしてか。それは、

 

(…だってあのヒトたち、──僕より弱いし)

 

それが、理由だった。

そもそもの話として、シルバープレアーというウマの身体能力は極めて高い部類に入る。

体格的にはやや小柄ではあるが、その小さな身体から繰り出される走りは鋭く、速い。

そして何よりも特筆すべきはその体の丈夫さだろう。

どれほど走ってもそこまで疲労を感じない、筋肉痛にもならない。

そんな、天性の肉体。

だが。

それでも、シルバープレアーは自分を()()と思ったことはなかった。

何故なら、──自分よりもずっとすごい存在がいると、もう知っているから。

ひとりはそこそこ仲の良いクラスメイト。

そしてもうひとりは自らの父の、…伯父にあたるウマ。

そのふたりにシルバープレアーのプライドというやつはメキメキにへし折られていた。

完膚なきまでに、可哀想なほどに。

追い抜いていく背と、追うことすら許されない背。

……どちらも、とても速かった。

だからだろうか。

いつの間にか、シルバープレアーの中の価値観が大きく変わっていたのは。

自分より弱い相手に何か言われても気にしない、というより意識に()()()()ようになったのは。

 

(…僕より強い人なら、言われたことを考えたりも、反省したりもしたのだろうけど)

(だってあの人たち、)

 

──僕より、弱いもの。





銀の祈り:
シルバープレアー。
そう言われてもこの人たち僕より弱いし…の気持ち。
同期の【英雄】と父の伯父である"とあるウマ"にプライドをペキっとされているすがた。
でもナチュラル強者なので自分より弱いやつに脳のリソースを割かない。
ので、どれほど周りから嫌がらせをされようが「…?あったっけ、そんなこと」状態。
そんなだから、嫌がらせが起こっても大概長続きしないんだって。
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