ありふれた、どこにでもいる"きょうだい"の話…でした。
"おれ"はただの、どこにでもいる馬だった。
口調こそ荒いが子どもである"おれ"のことをよく考えてくれる母と無口ながらやさしい兄。
『にいちゃ、にいちゃ』
『…どうした』
兄はいつも一頭だけで静かにいた。
だが幼い"おれ"が兄を慕い、近づけばやさしく応答を返してくれて。
兄のその身体にもたれて眠ったこともあった。
そんな時、決まって母はやさしく微笑んでいたように思う。
そして。
"おれ"と年子であった兄は先に、
"おれ"もそうなるのだと母に言われては"おれ"も兄と同じ
『にい、ちゃ…?』
久しく会っていなかった兄と再会して、"おれ"の頭に真っ先に浮かんだのは『これが本当に兄なのか』という驚愕であり。
何故なら兄の顔には、
『…ごめんな、見苦しくて』
大きな、大きな火傷跡。
*
それから。
"おれ"は
そこで"おれ"は、
『なぁなぁ、』
『…うん?』
額に三日月みたいな模様が入っている馬に出会う。
特段話す内容もなかったのだが、何故か声をかけてしまって。
それで最終的にはその馬に"おれ"は負けてしまったのだけど。
『すごいなぁ、アイツ…』
・
・
・
ここまでが、"おれ"の生涯にとって
『ははは、』
あのあと、"おれ"は
『ははははは、』
そこから母がいるところに戻って、
ちょこちょこ仕事をしながら代わり映えのない生活をしていたある日、
『シルバーバレットの代替として』
"おれ"は、また別の場所に移った。
みんな、"おれ"を
いつだって、みんなが"おれ"を、───兄の名で呼ぶ。
『はは、ははは…』
『…███』
ただ、笑うしかない"おれ"に声がかかる。
でも、
(もう、聞こえないんだよ…)
ごめんな。
そう、心の中でつぶやいて。
"おれ"は、目の前にいる額の三日月模様が特徴的なヤツに…。
『あはは、』
"おれ":
1981年-1995年(14歳没)。
年子の全兄(火傷跡持ち)がいる父ヒカルイマイの芦毛牡馬。
新馬戦は兄と同じく楽勝したが、その後から伸び悩み遂には引退。
騎手であった人々がいうには『末脚を使おうとすると不意にピタッと止まってしまう。まるで脚を
引退後は生産牧場である土地で、馬主の尽力もあり功労馬兼プライベート種牡馬となっていたが
その場所にてどこかれで出会ったことのある、額の三日月模様が特徴的な馬とよく過ごすようになるが…。
年子の全兄を慕い尊敬しており、全兄ほどではないが利口であった。
そのため自分が全兄の代替であることに、もう全兄が
あは、あはは、あははは…。
がしかし。
これでも移動した後の産駒に5頭程度はG1勝利馬がいるとか。
さすがですね(色々な意味で)(ニッコリ)。
三日月模様が特徴的な馬:
"おれ"と同期で、"おれ"とは弥生賞にて対戦経験あり。
若き日の自分に物怖じせず話しかけてくれた"おれ"のことをずっと覚えていた。
が、再会した"おれ"が徐々に…していく姿を近くで見続けては心を痛めるように。
実は内と外で性格が違うとか…?("おれ"の前ではいつもやさしいケド)
生存√だったら、穏やかに暮らせたのにね。