さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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主人公のイメソンはPENGUIN RESEARCHさんの『千載一遇きたりて好機』です。

【追記】
誤字報告ありがとうございます。


栄光の前に

1990年、秋。

シルバーバレットは何とかジャパンカップへ出走できることとなった。

脚も問題なさそうだ。

 

「世界から強いやつが来るぞ。…楽しみか?」

 

調教終わりにそんな話をすると「もちろん」という風に顔を擦り寄せられる。

 

「勝つぞ、相棒」

 

風が涼しくなった秋、調教が本格化してきた。

脚の様子を見て調教が成されているが、僕を見る人々の熱が籠った目を見るともうすぐなのだなぁと感じとれた。

 

僕が出走するのは"ジャパンカップ"。

そこを走ったあと、どうなるかは知らないけれど取り敢えずそのレースを勝つことを第一に考えよう。

 

「ジャパンカップはね、世界から強い馬が来るよ」

 

騎手くんも僕を調教してくれる人もみんなが毎日同じことを言う。

僕がレースをつまらなく思っていたのを彼らは察していたようで。

そのことに多少の申し訳なさを感じつつも、彼らが僕の勝利を微塵も疑っていない姿に一層力が入るというもの。

 

「勝つぞ、相棒」

 

おうとも、相棒。

騎手くんの言葉に応えるように、僕はひとつ嘶いた。

 

 

シルバーバレットは11歳(現在表記で10歳)の馬だ。

そんな馬がG1、それもジャパンカップに出てくることを枠潰しという人もいる。

 

「もちろん勝ちますよ。…負けるつもりで出てくるヤツがどこにいますか」

 

引退の記念出走かと言われることが腹立たしい。

バレットは誰よりも強いのだ。

怒りを押し込めた声は酷く冷えきっていた。

 

「全身全霊で俺たちに挑んできてください。負けるつもりは毛頭もありませんが、…シルバーバレットに競り合うぐらいはしてほしいですね」

 

怒りで思わず、そんな挑発をしてしまったのは後で反省したのだけれど。

 

 

馬運車に揺られ、やってきた場所には見覚えのない馬がたくさんいた。

まぁ僕は長い間走っているし、怪我でいない間もあったから入れ替わったりもしているのだろうけれど。

 

『…先輩?』

『んぇ?』

 

馬房に向かう折、そう話しかけられた。

声のした方に顔をやるとご飯が入っているであろう桶から顔を上げている立派な芦毛の馬。

 

『…もしかして、』

『やっぱり先輩だ』

 

療養施設にて出会った後輩だった。

後輩は『先輩も一緒に走るのか』と嬉しそうにしているが僕からしてみると後輩はどうにも元気がなさそうに見える。

 

『ジャパンカップにキミが出るならそうなるね』

『たひか、そのれーすにでぅはずれす』

『ちゃんと飲み込んでから話しなさい』

 

少しばかり話していたが、僕の手綱を握っていた人に先を促される。

ムッシャムッシャとご飯を食べている後輩に見送られながら僕は馬房へと入るのであった。

 

 

 

その場所に滞在している間、写真を撮られたりしたのはまた別の話。




僕:リハビリ施設にて出会っていた後輩と再会した。
もっしゃもっしゃとご飯食べてる姿を見て変わってないなぁと思いながらも『元気なさそう…?』と内心思っている。
実のところ、メンコ取った状態の僕は意外とイケウッマです。
ミスターシービーが女形のような顔なら僕は抜き身の刀みたいな顔をしている感じ。
今回、一応取材を受けた結果撮られたメンコキャストオフの写真はだいぶプレミア化すると思います(僕は気性面は問題ありませんが顔の火傷跡を見られるのが嫌でメンコをつけているので)。

後輩:一体どこの何リキャップなんだ…?
リハビリ施設にて慕っていた先輩の僕と見かけ、思わず食事を中断させた。
僕と一緒に走れるんだ〜と喜んでいる。

騎手くん:相棒が舐められていることに軽くキレた。
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