さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

230 / 1416

リクの「プレアー、アウトレイジ親子に激重感情を抱く三冠バ会」の話。
銀の激情は口調が荒いけどちゃんと銀弾のことを尊敬してるんだ。
無茶はするなジジイ…頼むから…!タイプの子だからね、仕方ないね…。



英雄、暴君、皇帝超えと何も知らない彼らの話

誰もが諦める中で、僕の隣にいてくれたのがキミだった。

 

『ねぇ、走ろうよ!』

 

僕の手を引いてキミが走る。

キミの美しい芦毛は、何よりも僕の目印になって。

嗚呼、あそこに走っていけばいいのだな、といつも思っていた。

キミの走りが好きだ。

それを追い抜かすのが、好きだ。好きだった。

でも、

 

(なんで)

 

あの日、あの冬の日。

はじめて僕が負けたあの日。

にこやかに勝ったあの人と握手するキミの姿を見て、ズキリと胸が痛んだ。

 

『いやぁ、完敗ですよ。やっぱり上には上がいるものですね!』

 

嬉しそうに、ニコニコと。

…なんでさ。

僕と走ってる時はそんな顔しないくせに。

僕はキミと走るのを楽しんでいるのに、いつもキミは。

ずっと下を見て、何かを考え込んでいる。

 

「ねぇ、」

 

引退して、何年も経ったあと、未だテレビに映るキミの姿をなぞる。

そして、言う。

 

「…僕だけを、見てよ」

 

 

そのウマに対してのはじめの印象は実兄の知り合いというただそれだけだった。

実の弟から見ても結構怖い兄に臆せず付き合い、自他ともに認める友人のポジションを確立したのは素直に凄いと思うし。

でもただそれだけだった、…あの日までは。

 

「……は、?」

 

悲願の地で、そのウマの名前が叫ばれる。

歓声を浴びたそのウマが嬉しそうに笑って、トレーナーに抱き締められて。

俺には、見向きもしなかった。

その姿を見て、はじめて『悔しい』、と思った。

今度は俺が勝つって。

アンタの視線を俺に向けてやるって、…思ったのに。

 

『最後に一緒に走ったのが、キミでよかったなぁ。

ありがとう、楽しかったよ!』

 

…なんで。

 

 

その時、突風が吹き抜けていったと思った。

勝利を確信していたところに突如として現れた影。

 

『あ゛〜…勝った勝ったァ』

 

ガリガリと面倒臭そうに頭を搔く姿。

息ひとつあがっていない気楽な素振りで私を見る貴方。

 

『よォ、楽しかったぜセンパイ』

 

本心では思っていない、世辞のために出されたようなその言葉にカッと頭に血が昇った。

私は、私は…!

わなわなと震える私を横目に去っていく貴方。

私はこんなモノじゃない、今度こそ目に物見せてやる!

そう思ったのに、

 

『あ゛?ここで引退だッつってんだろ。

まだ走れるゥ?うっせぇな俺とトレーナーで決めたンだから外野が口出しすんじゃねェ!』

 

…勝ち逃げされた。

 

 

──────

─────

────

───

──

 

僕、彼にずっと勝ちたかったんだよね。

ずっとずっと勝ちたくてさ、だから負けたあとは次どうやったら彼に勝てるかってずっと考えてた。

それであの有でね、見ることのできた走りに『ああ言う考え方もあるんだなぁ』って思ってさ。

それに『さすが先輩だなぁ』って気持ちも。

それからいっぱい走って…、そう言えば最後に一緒に走った彼も凄かったね。

仲良かったあの子の弟だから帯同してあげて、って言われたときは驚いたけど、…いやホントに凄かった。

たぶん日本でのレースだったら負けてましたね、いつもみたいに。あはは。

 

 

んァ?なんだァ、アンタ?

へぇ、あの皇帝超えの女傑サマの話ィ?俺に?他にもっといい奴いんだろォ?

……へいへい、わっかりましたよォ。

ンで?なに話しゃあいい?好きに?ふぅん。

…まァ、いいオンナじゃねぇの?

他にねェのか、って言われても俺があのヒトに関わったのはあの天皇賞・秋だけだぜ?

そっからあとは全部海外に行ってたンだからよォ。

ッてコトで、んじゃ。

 





【銀の祈り】:

あなたたちを()()()、僕は先に往く。
あなたたちと走れて、本当に、よかった…。
────じゃあ、ご馳走様でした。

シルバープレアー。父シルバーチャンプ母父ヒカリデユール。
貪欲な獣。強くなるために、よく喰べ、よく育つ。
自分を『普通』と言いながら、その実ナチュラルボーン強者。
(どっちかと言えば)陽属性の者。でも周りが勝手に曇る。
同期の【英雄】にずっと勝ちたい!と思っていて、負けるたびに『次どうすれば勝てる?』と真剣に考えていたため笑えなかった。
なお2005有馬で笑っていたのは『やっぱりシニア級の先輩って凄いんだなぁ!』という気持ち+【英雄】に勝つためのひとつの例を見せてもらったから。
【金色の暴君】に対しては弟みたいな感じで見ている。
可愛いなぁ、可愛いけどとっても強い!みたいな。
走ることが大好きで、またどれほど負けようが屈せずに前を向ける男。
だがそのあり方ゆえに、へし折った相手は数知れず、…かも?

それはそれとして、師匠兼先輩兼同室であるシルバデユール(父ヒカリデユール母シルバフォーチュン)のことをとても敬愛している。


【銀色の激情】:

…走ることは好きだけど。
でも毎回本気で走ンのはちびっとキツい。
だからさァ、───勝つとこ勝ちゃあ、問題ねェだろ?

能ある馬。基本武器(つめ)は隠している。
【銀の祈り】の息子。基本話し方がチンピラ寄りだが常識人だし良い人。
父である【銀の祈り】のことを尊敬しているがその本質には気づいていない。
なお皇帝超えさんには『いい女だなぁ』という感情を持っているがそれまで。
だって俺、あのヒトと一回しか走ってないし…、どうせ俺のことなんて覚えてないだろ。
普段は駄目駄目だったりするがちゃんとしなくちゃいけないところはちゃんとキメる男。
意外と男女問わずモテていたりする。ナチュラルジゴロ。


激重感情勢:
とても重い。またの名を自分を見て勢とも言う。
2005有馬でなんで僕には笑わないのにあの人には笑ってるの?な【英雄】とか今度こそ俺を見てもらう…!してたら引退された【金色の暴君】とか本当の私を見せてやる!してたら勝ち逃げされた皇帝超えさんとか…ハイ。


すべての元凶:

…なんで僕の血族で凱旋門賞勝つ子は三冠馬に縁があるんだろうなぁ?(CB&皇帝から熱視線を受けながら)

すべての元凶。原点にして頂点。
‪√‬によっては亡霊だったり亡霊じゃなかったりする。
ちなどの世界であっても貪欲な獣である【銀の祈り】からはナチュラルにいちばんの"獲物(ごちそう)"として狙われているし、能ある馬である【銀色の激情】くんからはそろそろ隠居しろ(そしてそのまま平穏に…)と思われていたりする。
が、そんな彼らに今日も今日とて気づいていないし、そんな彼らの想いをまったく知らないままである。
知らないままに、今日も周り(の情緒と脳)をぐちゃぐちゃにしていくのだ…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。