さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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たぶん銀弾系列は気に入った相手に対してこういうとこあるし世話焼きなんだ。



銀の王者とリョテッ飯

 

「…なんスか」

「いや、」

 

料理が不得手な俺の元に作り置きの料理を渡しに来た、かつての後輩の姿を見るとなるほど──他人の言うこともあながち間違いではないのかもしれない。

 

後輩-シルバーチャンプは、あのころ、とても気が立っていた。

ピリピリした、鞘のない刃物。

周りを切りつけに切りつけ、いつ刃こぼれするか分からない…。

そんな刃物のようなウマだった。

 

だが今目の前にいるのはどうだ?

包丁を握り、玉ねぎをみじん切りにしているウマは、どこにでもいるような、ごく普通の存在だ。

ゆったりとした服の袖を腕まくりし、長い髪もポニーテールにしてまとめている。

その姿からは、かつて刃物のように尖っていたオーラなど微塵も感じられない。

包丁を握る手元を見つめるその目は、どこか懐かしさを覚えるくらい穏やかだ。

──なんだか、肩透かしを食らった気分である。

 

「なぁ」

「はい」

「なに作ってんの」

「【夢への旅路】くんとプレアーからのリクエストでオムライスっす」

「……そうか」

「先輩は、なにか飲みます?」

「じゃあ、アイスコーヒーで」

「了解です」

 

シルバーチャンプから差し出されたグラスを受け取って。

俺がここに来る前に、もう準備していたらしい。

氷の入ったそれがカラコロと音を立てて、透明から茶色になる。

 

「先輩は男の料理なら上手いですケド、さすがにアレを毎日子どもに食わせるのは…ねぇ?」

「うっせ」

「ははは」

 

後輩が笑うと、ポニーテールも揺れ。

俺はその頭をぼんやりと見ながら、また1つ、年を取ったのだと思った。

 

 

知り合いに会うたびに、「おだやかになったね」と驚かれるようになって幾度目か。

自分では分からないその変容は他人から見るに、ずいぶんと驚愕なものらしい。

それはおそらく、あの【呪縛】から解放されたおかげなのだろうと思う。

【呪縛】のそばにいた自分は、きっと知らず知らずのうちに影響を受けていたのだ。

そして今もなおその影響を少なからず受けているからこそ、あのころの【呪縛】のひどさを思い出して苦笑してしまう。

 

「おい」

「…………」

「おい、聞いてんのかよ」

「え、あ、はい! なんでしょう!」

 

ぼんやりとしていた意識を戻して返事をする。

すると相手-先輩は呆れた顔をした。

 

「お前大丈夫かよ……ボーッとしてんじゃねえぞ」

「あ…すんません…」

「ガキ共も腹減った〜ってよ」

「うわわ…。ぁ〜、ごめんな?ふたりとも待たせて」

 

己の服の裾を引くプレアーと、足元でペタペタと歩いている【夢への旅路】を抱き上げる。

すると【夢への旅路】は人見知りみたく目を逸らしてから、少しだけ笑いかけてくれた。

プレアーのほうは、なぜか少し不服そうな表情をしている。

一体どうしたんだろう?

そんなことを考えていると、

 

「おなかへった」

「…なるほど」





【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
引退したら穏やかになったすがた。たぶんこっちが素…?
【呪縛】から解かれて、ちょっとフワフワ仕出した。危うい。
ちな休日になるたびに先輩の家に息子の【銀の祈り】と共に訪れてはご飯を作ってワチャワチャする日々を過ごしている。
引退した後はゆったりとした服装を好むようになったが、雰囲気が雰囲気のため牝バに間違われることも…?
だがそれはそれとして、元トレーナーと会うとツンデレになるとか。

先輩:
キンイロでリョテッとした御方。家での普段着は文字T。
引退後フワつき始めた後輩を心配したりしなかったり。
洗濯などはソコソコだが料理は大雑把な男飯!ぐらいしか作れないので休日になるたびに後輩である【銀色の王者】が料理を作りに来てくれるようになった。胃袋を掴まれている。
なお補足すると休日は基本料理している【銀色の王者】にちょっかいをかけるか、息子s(【夢への旅路】、【銀の祈り】)と遊んでいる模様。
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