さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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【銀の祈り】、一回も戦線離脱しなかったぶん銀弾よりも焼き払った数が多いんですね。
でもそんな【銀の祈り】が望む相手は…?って話です。



蜘蛛の喘鳴

キミが"綺麗"になったと、気づいたのは何時のことだったろう。

たしか、引退して1、2年ほど経ったぐらいだったと思う。

ふと、点いていたテレビに映ったキミにゾワ…と脊髄を撫で上げられた感覚を覚えた。

何の感慨も覚えていない目。

どこか、親を探す迷子のような目。

あどけない子どものような顔をしながらも──易々と2位に鎮座し続けている姿に【英雄】はどろりとしたものを覚えた。

テレビ越しに見ているだけの自分が恨めしかった。

自分がそこにいたのなら、キミにそんな顔させないのにと。

半ば無意識にキミが探している相手は【英雄】(自分)なのだと理解していたのだ。

だからこそ……そのキミが2位に居(負け)続けるのを見て。

自分はなんてバカなことをしたんだろうと、心底後悔した。

 

 

キミは年々"綺麗"になっていく。

ゆっくりと、まるで羽化の時期を待つかのように変貌していく。

決して清らかなものではない、すべてを狂わせる"魔性"に。

そしてその"魔性"に近づくまいとする『本能』からか、キミの連対記録は途切れることがなくて。

畏れれば、負けてしまう。

気力を振り絞れば、蜘蛛の巣にかかった羽虫のように喰われてしまう。

キミという存在の虜になりながら、キミの虜にはなりたくないと思ってしまう矛盾。

だが…、キミという存在を知りたいと欲してしまった以上、抗うことはできない。

一度知ってしまえばもう抜け出すことはできないだろう──怖い、魅力。

そう、魅了され続けるのだ。

だから。

 

「キミの"獲物"は、僕だけでしょう…?」

 

嫉妬、している。

お前が()()()()のは、【英雄】(ぼく)だろうと本能が喚く。

でも。

それだけじゃダメなんだ。

もっと、ずっと。

キミにとって、特別な存在になりたい。

他の誰よりもキミの心に残っていられるような……。

そのためならば。

まずはキミを貶める、すべてを排除しようか?

キミを取るに足らないウマだと嘲笑う有象無象共を。

ふたりだけで、たのしく駆け()れるように。

 

「…ねぇ、プレアー?」

 

 

むざむざと生き延びた。

いまの状態はそうとしか呼べないのではないか、と僕は思う。

僕を唯一終わらせ得た【英雄(存在)】はターフを去ってもう久しいし。

ただただ、肥大していく欲を抑えつけながら生きている。

あの日の影を求めながら、自分を追い抜いてくれる【英雄】を求めながら。

誘蛾灯のごとく誘われてきた誰彼さま方を喰らいつつ。

いつか、僕に王手を掛けるかもしれない【誰か】を待ち望みながら。

きっと僕はこのまま朽ち果てるまで生きていくのだろう。

それは。

何とも。

 

(むなしい、なぁ…)





【銀の祈り】:
シルバープレアー。
ゆっくりと時間をかけて羽化する系魔性。
もはや妲己か?
ワケわかんない魅力(デバフ)をバラ撒くようになるが、そこから逃れても結局は蜘蛛の巣にかかった羽虫のごとく…という罠。
これからも美味しく育っていくけど、
いちばんに食べて欲しい相手(【英雄】)はもういないんだよね〜。…かわいそ。

【英雄】:
段々、年々、魔性度が上がっていく【銀の祈り】にギリギリしている。
【銀の祈り】が自分を求めてくれているのに嬉しい半分、自分以外をムシャムシャしているのに激重感情。
【銀の祈り】を喰いたいし、【銀の祈り】に喰われたい…みたいな矛盾思考がありそう。やっぱり銀弾系列関係者の三冠バはつおい…(いろいろな意味で)。ハッキリ分かんだね。
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