だんだん叔父そっくりになっている遥くんはいいゾ^〜これ。
白峰遥という人間は、『後悔』のかたちをしていた。
彼の夢は彼の叔父がたどった道で。
叔父の相棒だった馬の、そのまた甥の騎手となり周りの期待を人馬ともに向けられながら歩を進めた。
あのころはただ青かった。
未熟で、強がりで、理想ばかりで、自分のことで精一杯。
しかしそんな自分を、ただ支えてくれた『誰か』がいた。
その『誰か』がいなければ、今ごろ自分は潰れていただろう。
ぺっちゃんこで、ミジンコに。
きっともう二度と立ち上がれなくなって、そのあとはただ、負けて、惨めに消えていくだけ、忘れ去られていくだけ…だったろう。
でも。
「…チャンプ」
それを止めたのは。
彼の相棒-シルバーチャンプ。
はじまりであり、終わり。
『祝福』であり『呪い』。
一生かかっても治らないし取り除けない疵。
『運命』の相棒にして、最愛の馬。
彼と一緒ならどこまでだって行けた。
彼と一緒ならどんなレースにも勝てると思った。
彼と一緒ならなんでもできると思った。
彼と一緒に、いつまでも走っていられると思っていた。
でも。
世界には、限度がある。
才能には、限界がある。
結局は。
どんな存在だろうと、ひとりでしか走れないのだ。
そう、気づかされたときから。
自分が彼にしてあげれたことはなんだった?……と、考えたときにあったのは。
「ぉ、れが…」
ひとしきりの後悔。
あのとき俺が止めなければ、と。
脚がもたないだろうからと、無事に走り終えることだけを考えろと。
───エゴだ。
俺の身勝手につきあわせて、彼を壊した。
だから、俺が悪いんだ。
俺のせいなんだ。
そう思い続けて、今日まで生きてきた。
そしてこれからも。
ずっとそう思って生きていく。
それがせめてもの償いだと思っているから。
けれど。
「…うん。行こうか、プレアー」
『後悔』は、まだ…。
*
あの様を見てると血筋だなぁ、と思うときが時々あるよ。
天才ではないけれど堅実で、誰よりも馬のことを考えている。
そのくせ自分のことをおざなりにして、周りに目を向けていないところが玉に瑕。
…だけど。
それはそれで、良いことだと思う。
他人に振り回されずに自分が行くべき道を選び取れることは。
…でも。
彼はもう少し自分本位でいいんじゃないかなと、僕は思うけどね───。
男を含め、周囲から見た"白峰遥"という男はまさしく『
あの日消えてしまったはずの幻想が。
まるでまだそこにいるかのごとく振る舞っているようにしか、見えなかったのだ。
それは。
周りの人間が無意識にそう望んでいるからであり。
誰もが、かの『幻想』に対して戻ってくると信じ込んでいるから。
それこそあの日から、皆が皆…。
「まぁ、それは僕もなのだけど」
甥っ子:
白峰遥。騎手。
叔父の代名詞である追い縋ることさえ許さない逃げ…ではなく、急速と超遅緩を織り交ぜた蜘蛛のような幻惑の逃げを得意とする逃げ馬の名手。
だが、シルバーチャンプなどを見る限り追込み馬も得意な模様。
ちな本人的にはそう思っていないだけで才能・技量ともにトップクラス側の人間。
じゃなかったら若手時代に凱旋門賞行けるワケないし…。
かつての叔父コンビと最愛の相棒に脳を焼かれて幾星霜。
実は知らず知らずの内に騎乗スタイルやふとした時の表情などが叔父に似てきたとか(まぁそれには彼と長い付き合いとなったシルバープレアーが要因の大部分を占めているのですが)。
ので、周りから熱視線を受けているのだが流石あの系列と言わんばかりに叔父と自身が鞍上を務めている馬とかつての『後悔』のことしか考えていないので…。
【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。白峰遥とは甥っ子同士。ツンデレ。
また白峰遥の『運命』であり『最愛』であり『後悔』であり『呪縛』でもある。
どうにも白峰遥いわく、今でも彼との凱旋門の時の夢を見るとかどうとか…?
ちな息子である【銀の祈り】が凱旋門賞を勝つまで『後悔』が深すぎる故に白峰遥に会いに来てもらえなかった系ウッマ。
再会したら、いの一番に蹴りにかかる(フリする)し甘噛み噛んでくる。
【銀の祈り】:
シルバープレアー。【銀色の王者】の息子。
白峰遥にとっては『後悔』の続きであり、叔父とその相棒だった馬のリスタートのような…そんな感じ。
なお主戦騎手であった白峰遥いわく、彼の父である【銀色の王者】と同じく鞍上を絶対に譲りたくない馬としており、万年2着と言われては「俺のせいだ…」と内心よくネガっていた。
でもやっとこさ『祝福』を受け取れ…?
だが『後悔』は『後悔』ままである。
疵が埋められても、その痕がたしかに遺るように。