双方引退後のスペシャルウィークとシルバーチャンプの話。
・銀弾系列のひみつ
現役中はカチッとした服装を好むのに引退後はゆるっとした服装を好むようになるのが大半。
また性格もそれに倣うかのように穏やかになる(個人差はあります)。
その日、阪神レース場にて見かけた影にスペシャルウィークは声をかけた。
「隣、いいですか」
「あぁ、はい…。あれ?」
くだんの影-シルバーチャンプは、スペシャルウィークの同期だったウマで、対戦の機会こそなかったが密かに注目していた相手であった。
「奇遇だな」
がしかし。
久方振りに再会したシルバーチャンプは、"あのころ"と比べると雰囲気が穏やかで。
近づくだけでピリピリするくらい気が立っていたことを考えると同一人物とは思えないほどだった。
まぁそれも当然といえば当然である。
"あのころ"のシルバーチャンプには多大なる期待がかかっていた。
血筋ゆえの、多大なる期待。
勝っても負けても、変わらずかけられるような。
シルバーチャンプという『個』を通して見られる影…。
「スペシャルウィーク?」
不思議そうにかけられた声に慌てて「大丈夫」と返す。
そして、隣に腰掛けた。
「末の妹が
「そう」
僕は娘が出るよ、とは言わなかった。
どうせ分かるだろうと思ったからだ。
仕事をし始めた僕らがこういうところに、こうして居るのはさしずめそうでしかないのだから。
「お。…よかった、緊張とかはないみてェ」
ゆるりと緩む眼差しに慈愛を感じる。
どこか抜き身の刃物のようだったあの青の双眸は、穏やかな海になっていて。
それはきっと守るべきものができたからだと。
大切な誰かを思ってのことなのだろうと、察せられた。
そんな変化を見て取って、微笑ましく思うと同時に寂しくもある自分に気づく。
―あぁ。キミはもう、キミだけじゃないんだね。
いつか見た、荒れ狂う濁流のような激情はそこになくて。
それを寂しいと思う自分がいて。
同時にそれが喜ばしいとも思うのだ。
キミはキミだけのものではなくなったけれど。
でもやっぱりキミがキミであるのなら、それは僕にとって嬉しいことなのだ。
「……良かった」
「え?」
「ちゃんと、キミらしく在れているみたいで」
「俺らしいってなんだよ」
苦笑してみせるシルバーチャンプに肩をすくめてみせた。
キミがキミらしく在れるということ。
それは、……少なからずあの"影"を振り払ったのと同義ではないかと。
そう、僕は思ったから。
でも、それはそれとして。
「ねぇ、チャンプくん」
「なんだ?」
「どうして同期会来ないの?」
「エッ」
「どうして?…あっ!いや責めてるワケじゃあないんだよ?人それぞれ用事とかがあったりするだろうし。……でも、いつ誘っても断られるから」
しゅんとした様子を見せるスペシャルウィークに、シルバーチャンプは慌てて首を振った。
そんな様子を見て、さらにしゅんとするスペシャルウィークだったが、やがてポツリと呟いた。
その顔は俯きがちではあったが、耳がピコピコ動いているところを見ると、決して不機嫌になったわけではないらしい…。
「だ、」
「だ?」
「だって、俺とお前らって…そこまで、仲良くないじゃん…?」
「」
「…スペシャルウィーク……?き、気絶してる…!?」
【日本総大将】:
スペシャルウィーク。
むかしの、キレてる時代の【銀の王者】を陰ながら心配していた。
【銀の王者】と仲良くなりたいなぁ、と思っていたら特段関わることもないまま引退されてしまい、引退後もそれとなく同期会に誘うも断り続けられる日々…。
で、今回断られ続けた理由を知った結果、「」状態となる。
同期面子の中ではいちおう安牌枠とかどうとか…?
でも本気出したらヤバそう。だって【日本総大将】だし。
【銀の王者】:
シルバーチャンプ。
引退して落ち着き、キレていたのも也を潜めた。
キッチリした服装よりもゆるっとした服装を好んでいる。
その姿を見られては「【あのウマ】そっくり」などと人知れず言われていたり。
また、家族のことが何よりも大切と言って憚らないようになっているため、家族以外で【銀の王者】に予定を取り付けるのは至難の業となっている(除く【金色旅程】)。
だがそれはそれとして同期会を断っていたのは…?
いや、だってアイツら傍目から見てもスッゲェ仲良いし…。
俺が入ったところで、どうせ空気悪くするだけだから…な?