届かなかったから、諦めがついた話。
シルバーチャンプが
「なんスか」
【金色旅程】の知るシルバーチャンプはいつも思い詰めたような顔をしている後輩である。
生来の脚の弱さとか、周囲からかけられる期待だとか。
そんなものに押し潰されぬように何とかしているのが【金色旅程】の知るシルバーチャンプだ。
【金色旅程】はシルバーチャンプが自分のことで手一杯になっているのを何度か見たことがある。
だから、今回の件もできるだけ見守ってやろうと思っていたのだが──、
「…どうした」
「…、」
シルバーチャンプは顔を逸らした。
何だ。
この時期にまさか、…怪我をしたとでも言うんじゃないだろうな?
そんなことになればいよいよ洒落にならないぞ、おい。
冗談ではない。
こんなところで、お前は終わるタマじゃ…!
「……先輩」
「あ?」
「……。俺と一緒に走ってくれませんか」
「えっ……」
いやいや。
いきなり何言ってんだコイツ。
俺なんぞと走るより周りの…、それもクラスメイトと走った方が。
「…クラスメイトはみぃんな、他のレースに集中してますんで」
「……そりゃあ、俺だってそうだが?」
「ははは」
「おい」
笑うなよ。
…そもそも笑ってる余裕あるのかよお前。
そんな、もう諦めたみたいな顔して。
そういえば。
「なァ、」
「はい?」
「お前って、ラーメン好きだったっけ?」
*
結局のところ。
凱旋門賞を死力で
まぁ…仕方のないことだろうなとは思う。
だって、シルバーチャンプは長子として生家を継がねばならぬのだから。
それはそれとして。
今、俺たちが何をしているのかというと、
「ほら、さっさと頼めよ」
「はぁ…」
ラーメン屋にいる。
ちなみにシルバーチャンプが注文したのはヒト用ラーメン(普通)で、俺が注文したのはウマ用に作られたラーメン(少なめ)である。
いやぁ、久しぶりに食うけどこの店やっぱり最高だわ。
味もそうだけど量が多くて安いからな。
…とは言っても。
「お前さァ、俺の奢りだからって遠慮するなよ」
シルバーチャンプの頼む量が少な過ぎる。
ヒト用の並ラーメンを頼んでちまちまと食べている姿に俺は呆れていた。
コイツは昔からそうだ。
もはや奇妙なまでに食う量がトレーニング量に見合っていない。
「…お前、いつか鶏ガラみたいな体になって痩せ衰えてタヒぬんじゃねぇの?」
「他バに向かって随分な言い草だなァ…」
後輩を可愛がる【金色旅程】さんと可愛がられるシルバーチャンプの話(要約)。
後輩:
シルバーチャンプ。実は少食。
自身の脚とかけられる期待に…なすがた。
けど引退となったらスパッと引退できるぐらいには割り切っている。
…まぁ、それには凱旋門賞にて"視た"ことも関係あるんでしょうが。
だがそれはそれとして先輩である【金色旅程】にあれやこれやと世話を焼かれていたりする。
先輩:
【金色旅程】さん。体が丈夫。
後輩であるシルバーチャンプを可愛がっているウマ。
よく行きつけのラーメン屋で奢ったりなどしているとか。
なお後輩が引退したあとも機を見てはふらっと顔を見に行ったりするらしい。