さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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純愛定期。



『後悔』の再会

「そろそろ覚悟決めてくださいよ、トレーナー」

「でも、」

「も〜」

 

曲がり角の壁の部分に身を隠す自らのトレーナーにシルバープレアーはため息を吐く。

今日は久しぶりにゆっくりできる日ともあり、シルバープレアーの実家に来ているのだ。

 

「何年ぶりでしたっけ?トレーナーさんがこの家に来るの」

「…忘れた」

 

実のところ。

シルバープレアー本バはよく知らないのだが、トレーナーである男とシルバープレアーの実家は古馴染みで。

シルバープレアーの父-シルバーチャンプを新人時代の彼が担当していたことが関係の発端らしい。

いや、本当の要因はもっと他にあるのだけど、いま語るに相応しいのはこの理由だから。

 

「父さんも待ってますよ」

「…………」

 

そんなシルバープレアーの言葉にも無言のまま動かないトレーナー。

はぁ……ともう一度小さく溜息を吐いたシルバープレアーは少し意地悪なことを言うことにした。

 

「あれれ〜?おかしいですねぇ。確かトレーナーさん、言ってませんでしたか?」

「え、」

「『これでやっとシルバーチャンプ()に会い行ける』って」

「ぉ、おま、聞いて…!」

「そりゃ聞こえますよ〜、ヒトミミより何倍も性能がいいウマミミですから!」

 

トレーナーである男は、とある『後悔』を抱えている。

一生治らない疵のごとく、深深と刻み込まれた『後悔』を。

そして、それに関連するのがシルバープレアーの父シルバーチャンプなのだ。

 

「僕にはよく分かりませんけどね。

そんなにウジウジするなら適当な予定でっち上げて来なければよかったじゃないですか」

「それは……」

「…でも。会いに行こうとしてるから、今なんですよね」

 

そう。

この男がその『後悔』を背負うことになったのは初めての担当バであったシルバーチャンプが脚の不調で若くして引退するとなったとき。

あの時こうしていればとか、そんな『もし』が頭の中をグルグル回って、傷つけて。

…いつしか顔向けできないと、避けていた。

 

避けていた折、彼の前に現れたのがかつての相棒の子であるシルバープレアーで。

やり直しの、ようだった。

あのころ、できなかったことを今度こそ…とでもいうような。

けど、

 

(随分と、時間がかかったな)

 

グイグイと担当に背を押されるのを踏ん張るも無理で。

無理矢理叩き入れられたそこには、ゆったりとした服装に身を包みながら己の方を見て、目を丸くする愛バが。

 

「…やぁ」

 

何年、会ってなかったのだろう。

だから何から話せばいいのか、分かりやしない。

口から出るのはただ間抜けな音だけ。

がしかし。

 

「……か」

「?」

「遅すぎるッてんだよ、このバカ!!」

「!?」

 

勢いよく、飛びつかれ。

ふたりして床に崩れ落ちる。

うぞうぞと拘束から逃れようにも、顔を埋められている胸の辺りから微かに嗚咽が聞こえてくるのを認識してしまえば…。

 

「おそい、おそいんだよ、バカ…!」

「……うん」

 

抱き締め返さざるを、得なかった。

 

 

「は〜…ヤレヤレ。ふたりして何年も何年もうだうだして。お互いに『自分のせいだ』って思って、顔向けできないって勝手に自己完結してるのに「会いたい」って思ってたのがホント…」

 

世話、ないですよねぇ。

 





甥っ子組:
シルバーチャンプとそのトレーナー。似た者同士。
お互いにお互いが"あの結果"を自分のせいだと思っていて、『後悔』していて、勝手に「会えない」「(申し訳なさから)顔を合わせられない」と自己完結しながら「会いたい」と矛盾した考えを10年以上持ってうだうだしていたコンビ。

再会したら再会したでお互いボロ泣きだろうし、感動の再会案件になる。
実はドライに見えて叔父コンビと同じくらいお互いに向ける矢印がヤバい。
なので【銀の祈り】云々に関しては実質甥っ子組の愛の結晶と呼ばれているとか、呼ばれていないとか…。

【銀の祈り】:
シルバーチャンプの息子であり、トレーナーが決して手綱を譲らなかった担当バ。
自分の父とトレーナーの拗れた関係を間近で見ながら「はよ踏み込め(お互いに)」と思ってたりしそう。
トレーナーのことは慕っているがトレーナーの一番=シルバーチャンプ(自身の父)と理解しているので基本はふたりの関係のサポート寄りに。
重い感情向ける相手はまた別にいるからね。
でも…?

…これで父さん、喜んでくれるかなぁ?
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