さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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父親同士が仲良かったらフツーに出会ってるよね。

【追記】
誤字報告ありがとうございます。



雲と激情

たった一度だけ会った、そのウマのことを今でも覚えている。

 

『年齢も近いし、遊んできたら?』

 

父の友人だという優しそうな芦毛のウマの傍にいた子ども。

ずい、と父の背から押し出されて、合ったその目にドキリとした。

燃えるような光を宿した、蝋燭の火よりもずっとずっと強い光。

それに惹かれて、気が付いた時には手を伸ばしていた…まるで誘蛾灯のごとく。

 

『泣かせないようにね、レイ』

『分かってる!』

 

 

「よォ、飛行機雲の」

 

その日僕が出会ったのは【銀色の激情】と名高いシルバアウトレイジ先輩で。

既にトレセン学園を引退し、別の道を歩み出しているウマが何故こんなところ(栗東寮)にいるのかと思ったのもつかの間、「仕事で入用の書類取りにな」と返された言葉に納得する。

引退したとはいえ元G1レースバ。

それも親子二代凱旋門賞制覇という偉業を成し遂げたシルバアウトレイジ先輩には未だファンも多く、こういった事務作業も多いらしい。

 

「へぇ、そうなんですか」

「ンな他人事みたいに言ってられんのも今の内だぞ」

 

そう言った先輩は僕の隣に来てどっかりと腰を下ろし。

そのままベンチの上で胡坐を組んで、腕を組む。

その姿は現役時代と比べていくらか落ち着いたように見えた。

なんだろう、纏う空気が変わった?

そんなことを考えながらじっと見つめていれば、ふっと口角を上げる先輩。

 

「お前さん、自分の進路とか決めてんのか?」

「えっ」

 

思わず聞き返した僕の反応を見て、先輩はにんまりと笑う。

どこか楽しげに見える笑みを浮かべたまま、彼は続けた。

 

「いや何、ちょっと聞いてみたくなっただけだ。……まァでもアレだろ?とりあえずは、あの空の向こうに行きたいってところか?」

「……。どうしてそれを……」

「俺と同じ目をしてたからな」

 

同じ目ってどういうことだ、と思って首を傾げればまたも先輩は小さく笑って。

 

「俺はさ、…世界の果てに」

 

行ってみたかったんだよ。

 

 

相手が覚えているかどうか、定かではないがシルバアウトレイジと【飛行機雲】は幼いころにたった一度だけ会ったことがある。

まぁ大方父親同士の仲がよかったからというのが接点であろう。

閑話休題。

思い返せば、あのころ既にスレていた俺と違い【飛行機雲】は素直で可愛らしくて、当時の自分から見たら随分とお兄ちゃんぶりたくなるもので。

だから兄貴風を吹かせたのだが、

 

「…まさか今になっても()()だとは、なぁ」

 

用意してもらった書類を持って帰路につく。

その中でシルバアウトレイジは、

 

(時間あったら、また来てやるかぁ…)

 

などと。

考えて、くつりと笑っていたとか…。





【飛行機雲】:
父も三冠バ、自分も三冠バなウマ。
幼き日に一度だけあった子どもの目に宿った光に魅せられた。
【銀色の激情】のことはテレビでは見かけるけど顔を合わせたことはなかった…ぐらいの仲(その時期には既に【銀色の激情】が海外遠征に出ていたので)。
これから何故か【銀色の激情】に可愛がられることになる系後輩。

【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
幼いころに父に連れられて行った先で【飛行機雲】と出会っていた。
口調は荒いが面倒見がいい。
【飛行機雲】のことを可愛い弟分だと思っている。
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