さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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気に入った相手の胃袋を掴むクセがある銀弾系列。
たぶん家訓の中に「胃袋を掴め」ってありそう。



銀系列の密かな食育

「やぁ、【旅路】くん」

「ども」

 

今日も今日とて買い物袋を引っ提げ料理を作りにきた先輩を【夢への旅路】は家へと招き入れた。

先輩-シルバープレアーは今もなお現役の競走バである。

『永遠の二番手』などと他人から嘲られているのはムカつきを通り越して、シルバープレアーの魅力に気が付かないヤツらに憐れみすら覚えるが。

先輩は美しい走りで、ひたむきな走りで多くの人を感動させていた。

だがしかし。

そんな先輩は今、とても幸せそうな顔をしながらキッチンに立ち、料理を作っている。

その様はまるで(にい)…、いややめておこう。

 

「今日は何を作んだ?」

「ん~? 今日はね、ハンバーグを作ってみるつもりだよ」

「おお! それはそれは」

 

先輩が手際よく肉種を形成していきながら鼻歌を歌う。

 

「あ、そうだ」

 

その姿を見つつ、あることを思い出した俺は家の奥にそそくさと移動した。

手の中にあるのは親父から先輩の父親に渡すように言いつけられていたものだ。

 

「先輩」

「ん〜?」

「コレ、親父からなんスけど」

「え?」

「チャンプさんに渡しておいて、と」

「あ、うん。分かった」

 

 

「よォ、」

「…なんでここにいらっしゃるんです?」

「こまけぇこたぁいいんだよ」

「はぁ…」

 

突如として現れた先輩-シルバアウトレイジに一瞬虚をつかれた【飛行機雲】であったが、勝手知ったるように家の中へと歩を進められるのを見て、慌てたように後を追った。

 

「…うん。重かった」

 

キッチンの床に置かれたエコバッグはどさりと重い音を立てて。

ちらりと見えた袋の中身に、

 

「さ、お前はテレビでも見とけよ。すぐ作れっから」

 

そうして。

【飛行機雲】はシルバアウトレイジが作った料理に舌鼓を打つこととなった。

なぜ、いきなり訪問してきたと思えば続けざまにこうなっているのか、不思議でたまらなかったが美味しい料理を前にしては逆らえまい。

 

「…だってお前、不得手だろこういうの」

「は」

「ある程度はひとりでもやっていけるようにはされてるみてーだがゴミ箱ん中は冷食の方が多いし」

「う゛っ」

 

シルバアウトレイジの的確な指摘に思わずうめく。

確かにこの家には調理器具がほとんどない。

せいぜいあるのは包丁やまな板といった最低限のものくらいである。

それに冷蔵庫の中にも冷凍食品やレトルトが何とか詰まっている…というぐらいで。

 

「食事の世話ぐらいは見てやるし教えるよ」

「えっ、ちょっ、あの…?!」

「…嫌か?」

「い、いえ嫌ではないですけど!…でも、何でそこまで」

「ん〜、」

 

そう問うとシルバアウトレイジが口をつぐみ、少しうなる。が、直ぐに。

 

「親の真似!」

 

などと。

朗らかに笑ってみせるのに【飛行機雲】は呆気に取られた。

それからというもの、休日になるたびにさも当然のようにシルバアウトレイジが【飛行機雲】の家にやって来て、それが当たり前になるまで。

そしてシルバアウトレイジ目当てに【飛行機雲】宅に入れ代わり立ち代わりさまざまなウマが集まるようになるのは…また、別の話である。

 





【銀の祈り】&【夢への旅路】:
各々の父親を見て育ったため、トレーニング終わりなどにそのままご飯を作りに行く関係に落ち着いた。
引退後も父・母父の関係になることからしょっちゅう訪れている模様。
蛇足だが引退後の【銀の祈り】と【英雄】は行事や何か用事がある時ぐらいにしか顔を合わせない関係性となった。
お互いが言うには「だってあっちも忙しいだろうし…」とのこと。
…どれだけ時間が経っても、変わらず執着しているクセに、ねぇ?

【銀色の激情】&【飛行機雲】:
何となく気に入ったため世話を焼く先輩と焼かれる後輩の関係性。
実は幼いころに会ったことがあるがそれはそれ。
父親経由で【飛行機雲】の生活を知ったため、ふらっと来た。
【銀色の激情】的には目をキラキラさせてご飯を食べる【飛行機雲】に小動物的な可愛さを感じているとか。
なお、その時の顔は銀の系列特有の顔(すごく穏やか)らしい。
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