さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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史実√での【呪縛】の話。

『憧れ』とは、"奈落"へ続く道なのか。




堂々巡りで堕ちていく

我が血族は【呪縛】されている。

そうシルバアウトレイジが気づいたのは初めて本家の方に足を踏み入れた時であった。

ある一室に丁寧に配置された物、物、物!

そのすべてが【ある存在】に関するもので。

それに素手で触れようものなら烈火のごとく発狂する本家の者どもに幼き日のシルバアウトレイジが恐怖したことは言うまでもない。

しかしそれも今では懐かしい思い出だ……クソという方向性で、だが。

 

「…クソが」

 

『真面目に走れ』だの、『そんな立ち振る舞いをするな』だの。

クソつまらん説教をするヤツらの姿も、もはや遠い過去のように感じる。

この血族に生まれたものならすべからくがかかる【呪縛】。

物心ついた時から狂ったように見せられるビデオに同年代のヤツらが釘付けになっている横で、あのころのシルバアウトレイジは…イタズラを仕掛けまくっていた。

怒られなかったことの方が、まぁ珍しいくらいにはやらかしまくっていた。が、

 

(気持ち悪い)

 

シルバアウトレイジにとって、家のヤツらは気持ち悪くて仕方なくて。

だって怒られこそするが、その怒りは一過性のもので。

誰もがその走りの真似をしてはレプリカになって壊れていく。

まるで崇拝のごとく、【あの存在】に狂うように。

だからシルバアウトレイジは……壊したくてしょうがなかったのだ。

【あの存在】のすべてを壊したくてしょうがなかったのだ。

それを見て本家の者たちはまた怒るのだが、すぐに興味をなくす。

その繰り返しを、シルバアウトレイジはずっとずっとずっと。

流れ続けるビデオを横目に、走っていた。

俺が何もかも変えてやる、と思っていた。

思って、

 

「やった、やったやったやった…!」

 

ゴールを切った。

【あの存在】が切ったものと同じゴールを。

血族の悲願を果たした。

けれど、

 

「え…?」

 

それでも【呪縛】からは逃れられていない人々。

 

『あの"激情"がいけたのなら自分だって!』

「待っ……」

 

次々と、【あの存在】を模したような走りを見せる連中が増えていく。

本家の奴らも気づいてはいるようだが止める気配はない。

ただ、見ているだけ。

それが何を意味するのか、分からないほどシルバアウトレイジはバカではなかった。

 

「ふざけんな!ふざけんなァ…ッ!!」

 

 

────たったひとりが勝っても、【呪縛】から逃れられるワケないでしょう?

逃れられても、そこに至ることができた者が精々。

そしてその【呪縛】から逃れた数少ないひとりが…シルバアウトレイジなのだ。

 

「【呪縛(憧れ)】に終わりは無い、ねぇ…」





呪縛(憧れ)】を追って、逃れようが。
その他諸々はまだ囚われている。
…いつ、出られるかな?
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