さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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最愛の相棒によってかけられた『呪い』と『呪い』にかけられた"尊敬する人"のことを考える甥っ子の話。

だから、俺は走り続ける。

…それはそれとして、史実√銀の祈りの凱旋門は銀弾と白峰おじさんの写真が掲げられてそうだよね。



そうして、続く

「うわっ、ちょ、待っ!」

 

俺のはじめての相棒となった馬-シルバーチャンプは少々暴れん坊気質な馬だった。

俺がひとたび跨がればロデオマシーンのようにバッタバッタと跳ね上がり振り落とされそうになるのを必死になって落ち着くまで待つのがいつもの流れで。

 

「ふぅ…」

 

だが話を聞くに。

シルバーチャンプがここまで暴れん坊になるのは俺の前だけらしく。

生まれ故郷の牧場にていじめられっ子だった彼の行動は「試し」なのではないかと言われても信じられなかったのだが…。

 

「…チャンプ」

 

いつもなら。

うるさいくらいに鼻息を荒くしてはこっちに寄ってくる(噛み付こうとしてくる、ともいう)彼が緩慢に顔をこちらに向け。

こちらをチラ、と一瞥してはまた首を下げた。

そうして。

 

「チャンプ…っ!」

 

俺はその首に抱き着いた。

俺のせいだという後悔のままに。

俺があの時こうしていればとか、そんなことばかり考えてしまうから。

だからせめて今だけはいつもの自分で見送ろうと決めていたのに。

 

「ごめんね、ごめんな…」

 

シルバーチャンプの首筋に触れてみる。

が、特に傷があるわけでもない。

ただただ、あの時「よくやった」と撫でることも労うこともできなかったそこを何度も手のひらでなぞった。

するとシルバーチャンプの方からも頭を擦り付けてくるものだから余計涙腺が崩壊しそうになったけど。

ぐっと堪える。

そしてゆっくりと身体を起こすと。

 

「ありがとう。今まで、楽しかったよ」

 

名残惜しさを感じつつも手綱を引かれていく背を見送って。

 

「キミが、俺のはじめての相棒で、よかった」

 

その言葉は誰にも届くことなく。

嗚咽の中に、霧散した。

 

 

ストレスが溜まったり、体調が悪くなると決まって見る夢がある。

 

夢の中の時間軸はまだ俺が騎手になる前で。

俺の『夢』が消え去ったあと、ひどく憔悴しきった"憧れの人"-透おじさんに会いに行った時の情景…。

 

『ねぇ、透にいちゃん大丈夫?』

 

親からの躾でおじのことを「おじさん」ではなく「にいちゃん」と呼ぶように躾られていた俺はその日もそうして彼に声をかけた。

『夢』のことを、それはそれは愛していた彼は欠片ひとつ遺さず『夢』が消えてしまったことに絶望していて。

だけどそれを決して表には出さずに気丈に振る舞っていた。

……それが痛々しく見えて仕方がなかったのだけれど。

 

『あぁ、平気だよ遥くん』

 

弱々しい笑みを浮かべながら気だるそうに振り返る彼に俺は何と告げたのだったか。

でも、それは。

 

『何言ってるんだ、遥くん』

 

彼の、白峰透の、

 

『バレットなら、僕のシルバーバレットなら、』

 

───まだそこに、いるじゃないか。

 

「ッ!は、はぁ、はぁ、はぁ…、っ」

 

望む言葉ではなかったのだ、という認識だけはハッキリと…。





甥っ子:
白峰遥。白峰透の甥っ子であり騎手。
白峰透の最愛の相棒であったある馬の走りを見て騎手を志す。
だがはじめての相棒となったシルバーチャンプの競走生活が(彼自身にとって)悔恨を残すものとなったため、自分で自分に自罰的に『呪い』をかけた。

それはそれとして、最愛の相棒を喪った際の白峰透のどこかイってる目にトラウマを刻みつけられている。
本気の本気で最愛の相棒が生きていると信じている目に恐怖を覚えるが、シルバーチャンプと共に在った結果「そりゃそうなるよな」と少しばかりその狂気を理解する。…それはさぁ、しちゃダメなタイプのさぁ……!
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