ちゃんとコイツも血筋。
シルバーチャンプというウマは旗印のようなものだった。
後へ続く者たちを導く旗印。
キラキラとした光を見せて、「あそこへ行け」と促すかのような。
「…俺は、G1を勝てなかったからなぁ」
苦々しく笑うその顔を見た者はどれだけか。
シルバーチャンプが、アドバイスを求められれば快く応じるタチなのも相まって、多くの者が教えを求めた。
求めて。
「頑張れよ」
おだやかに笑う。
思わず見惚れてしまうような、見惚れるしかないような寂しげな顔で。
その憂いを、晴らしてやりたいと思うような、顔で。
「俺に出来ることはこれくらい…」
ごめんな、と本当に申し訳なさそうな顔で謝られて困ってしまう。
そんな顔をさせたくて言ったわけじゃないのだ。
ただただ、アナタの走りを魅せられて、魅せられた故にアドバイスを求めただけなのに。
そう思って首を横に振ると、シルバーチャンプはまた笑った。
ありがとう、と言ってくれたけれど、それはこちらの言葉だ。
でも。
このウマはきっと、ずっとこうやって生きていくのだろう。
自分が果たせなかった悲願に苛まれながら。
*
ずっと見る、悪夢がある。
まるであの日の再編のように、かの"影"を見て、必死に手を伸ばして、届かなくて。
こちらに一縷も見向きしてくれない"影"に、必死に追いすがっては振り払われて。
そして最後に必ず言われる言葉があった。
『キミじゃ無理だよ』
顔も見えない"影"に無慈悲に告げられる言葉。
それがどれほど時が経っても悲しくて、悔しくて。
夢を見ては夜な夜な泣いてしまうほどに、心の深いところに突き刺さって。
だからだろうか?
自分にアドバイスを求める後進たちを見るたびに、胸の奥底にある何かがざわつくようになったのは。
最初は気にも留めていなかった。
でも日に日に増していく感覚は無視できなくなっていて、遂には。
「…キミならできるよ」
ありもしない希望を見せた。
残酷なまでの、太鼓判を押した。
だって、本当は分かっているのに。
もう二度と、あの日の再現などできないということを。
だからこれは意地悪なんだろう。
自分の未練を晴らすためだけの行為。
それを分かっていてもなお、言わずにはいられなかった。
「どうか、頑張って」
期待しているから。
かつて自分と同じ舞台に立ったキミたちに。
いつか誰かが、その背中を追い越してくれることを。
「……」
祈っている。
フリを、している。
*
星を夢見た。
遠い遠いところに輝く、星を目指した。
空を翔べば、空気は薄く。
それでも、ただひたすらに、千切れそうな羽根で羽ばたいた。
そうして。
どうしようもなく、美しい"星"を視て。
無念のままに、墜ちてしまった。
それが、俺という、シルバーチャンプという、どこにでもいる一介のウマであった。
「…なんて、な」
【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
先達の顔をしながら、その実ココロの中はぐちゃぐちゃ。
求められるがままにアドバイスをしながらも「誰も"あのウマ"に届かないで欲しい」と思うジレンマ。
だがそれを巧妙に隠しては、自身の未練からの憂い顔を晒し若人を惑わしている。
やっぱコイツもあの血ですわ〜。ヒトのこと言えないならぬウマのこと言えないになってますわ〜。
なおあの詩みたいなのは遥くんが【銀色の王者】によせて、ある雑誌のコラムに寄稿したものだったり…?
というわけで白峰属はみな詩人なのだ。