さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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腐り果てる前に、捕まえて。

お互いにお互いの脳を焼いている【銀の祈り】・【英雄】だけど、早めに引退した【英雄】と違って【銀の祈り】は脳をこれ以上なくしっかり焼かれたあとに周りの脳を焼き払っていくから…。
もう脳に焼ける部分がない相手の脳を焼こうとする周囲とかいう湿度マシマシ激重感情案件になるから…。



熟れ切ったあとで

シルバアウトレイジにとって、父-シルバープレアーはこれ以上ないほど良い父であった。

結構な悪ガキだったが無闇矢鱈に怒鳴りつけて叱ることはなく。

悪いことをしたら諭すように教えてくれたし、些細なことで褒めてくれた。

そして何より、その優しさがいつも伝わっていたのだ。

親バカだったのか。

それとも教育方針だったのかは分からないが、とにかくシルバープレアーには子どもが甘えやすい空気があった。

だからこそシルバープレアーのそばにはシルバアウトレイジ以外にも子どもたちがよく集まってきていたし、誰もがその手を引いて行きたがり。

でも。

その中でも、子どもの中で上の方にあたるシルバアウトレイジには可愛がられている自覚があった。

 

「レイ」

 

そう、自分をやさしく呼ぶ父。

アウトレイジ自身がいくら「大丈夫」と言おうとも丁寧に、丁寧に脚の様子を診てもらったことも。

他の子どもたちとは少しだけ違う扱いも。

嬉しかった。

自分のためを思ってやってくれることだと知っていたから。

しかし、それが。

シルバープレアー自身に、何かしら思うところがあってしたことなんて、考えは一度もなかった。

だからシルバープレアーから『あること』を言われたときは、ただ、ポカンとするしかなく。

 

「…"美味しそう"になったね、レイ」

 

父が、シルバープレアーが、戦法に差しや追込みを使うウマを好んでいることは知っていた。

けれどまさか。

そんな理由で。

自分が狙われているだなんて。

信じられない話だが、事実なのだから受け入れるしかない。

それに。

この、目の前にいる父と相対しているというだけで震えそうなほどの"ナニカ"があるのだ。

どう考えたって、こんなところで捕まるわけにはいかない。

 

「じょ、冗談キツイぜ親父…」

「これが、冗談に見えるかい?…何とも、幸せな頭だねぇ」

 

違う。

いつもの父と、何もかも。

…いや、いつもの父がニセモノで本来はこっちの方が()()()()なのか。

わからない。

 

「逃げようったって無駄だよ、レイ」

 

だが、声は近づいて……。

 

「どうか、僕を喰 べ て ?

 

 

自分が求める物が、遠き日の()()だと、理解している。

もう遠に手放してしまって久しいもの。

手放してから、手放してはいけないものだったのだと理解した無様な記憶の産物。

目を焼くような鮮烈さと、圧倒をもって自分を差しに来てくれる影を。

求め続ける。

あの時のように。

もう一度。

そう願った果てにあったのは、ただ、

 

「…どこなの?」

 

孤独な栄光だけ。

遠の昔に、影を振り払ったことに気が付かない憐れな怪物だけが…。





【銀の祈り】:
シルバープレアー。
求めているモノが像を結んでいるぶん銀弾よりもタチが悪い。
(銀弾は求めているモノは『自分より強いやつ』という自分の目で見たことがないもの。一方【銀の祈り】の場合は…)
肥大していく魔性を抑えながら、過去の"影"を求めて逍遥する怪物。
脳焼きの根源が根源なので強い差し・追込みウマを見ると食指が動くとか。
しかし食指が動いても求めてるモノじゃないので勝手にシラケては周りから激重感情される悪循環。
ちな、このたび息子である【銀の激情】が美味しく育ってワクワク。
やっと自分を喰べてくれるかもしれないウマが出た〜!しかも可愛い息子!
…でも、本当に喰べて欲しいのは。

もし、もしも。
喰べてくれるとなっても長年かけて完成した【銀の祈り】と違って、はやばやと完成した【英雄】はもう老いていて、【銀の祈り】が求めた()()ではなくなっているんだよね…。
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