さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ハッピーバースデイ、ヒカルイマイ!…という話です。


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「おとうさん」

 

伸ばされたその小さな手のままに、俺は我が子を抱き上げた。

同年代のガキ共と比べてもずっとずっと小さな我が子。

妻も父である俺も気性がそこまでよくないと自覚している中でやさしく、穏やかに育ってくれている息子。

 

「…なぁ、チビ」

「なぁに?」

「フォーがいても、こうやってオネダリしてきていいんだぞ」

 

そして。

息子は我慢がとても上手かった。

妹であるシルバフォーチュンに気づけばあれやこれやと譲ったり面倒を見たりしていたのを知っていた。

それでも、こうやって甘えてくることをなかなかしないこの子の願いくらい、叶えてやらなくてどうするんだ。

少しだけ目を見開いたチビはそのままゆっくりと瞬きをして。

それからふわりと笑った。

ああ、そうだよな。

お前はそういうヤツだよ。

…でも、もっといっぱいわがまま言っていいんだ。

そう思っていれば、後ろから何かが近づいてくる気配を感じた。

あー……まぁなんとなく分かってるけど。

 

「ドーン!」

「どーん!」

「ハイハイハイハイ」

「!?」

 

視界に映るのはシルバフォーチュンを抱っこして抱き着いてきている我が妻ホワイトリリィ。

にひ、とイタズラが成功した子どものように笑う妻の頭を軽く撫でる。

…小突いたら倍になって返ってくるからな。

そしてそのままぎゅっと抱きしめた。

こいつらも、もっとわがまま言えばいいのに。

我慢すんなって何度も言っているだろうが。

そんな思いを込めて抱きしめていれば、同じように俺ごと抱き締める腕が、服の裾を掴む手が増えた。

見なくても分かるそれに、俺は。

 

「…ははっ、」

 

 

夜。

よく手入れされた庭が見える縁側にて。

 

「…チビもそうだけど、キミも愛されるってことを知った方がいいよ」

 

その白い髪によく映える黒い着流しを着た初老のウマがそう漏らす。

隣に座すまだ歳若い牡バに向けて。

 

「チビが甘えるのヘッタクソなのはたぶんキミからの遺伝だねェ。あれぐらいの時のリリィは…まぁそれなりにワガママ言ってきてたし」

 

そう言って初老のウマが酒を飲み込む。

ぷはぁ、と息を吐いて。

目の前にある月を眺めながら言葉を続ける。

その日も月がよく見える夜で。

雲ひとつない空に浮かぶ満月が辺りを照らしては縁側に座る彼らを見やる。

 

「ぼくたちは一度愛した相手を手放すことはない」

「…はい」

「それが例え地獄に堕ちようが」

「……はい」

「だから安心して愛されるといい」

 

───お誕生日おめでとう、ヒカルイマイ(我が義息子)

 

「だがそれはそれとしてお酒飲め」

「えっ、」

「なンだァ?ぼくの注ぐ酒が飲めないって?」

「ウワ、飲兵衛が絡んできた」

「キミがぼくよりお酒に強いってことはもう知ってるンだぞう!ほらほら」

「あ゛ぁ〜…!」





父:
ヒカルイマイ。
家族のことを大切に大切にしているが実は甘えるのが苦手。
本人がそのことに気づいていないのがタチ悪いので結構な頻度で家族に甘やかされている。嫌と言っても甘やかすからなァ?
なのでどっちかというと愛してあげたい派なホワイトリリィ含む【白の一族】とたいへん相性がいい。

【白の一族】:
愛してあげたい派(やさしく表現して)。とても一途。
一度愛した相手は離してあげられないし、一生自分たちに愛されろする。
そして相手をコレと決めたら二度と他には靡かない性質も持つ。
だから周りに激重感情抱かせんだよ…(遠い目)。
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