見ている。
もしも。
僕の世界にいるのがキミだけであるように、キミの世界にいるのが僕だけであるのなら、それはなんと素晴らしいことだろう。
だが、それはただの夢想にしか過ぎない。
何故ならキミはとてもやさしいウマで、キミのそばにはいつも、キミを慕う誰かがいるのだから。
――ああ、でも。
それでも、僕は思うのだ。
たとえ夢想の中だけであっても。
キミを独り占めできたなら。
それより幸福なことはないだろうと…。
キミは、つれないウマだから。
僕がこんなにも熱視線を送っているのに見向きさえしてくれない。
だけどね、そんなところも素敵だと思うよ。
だってほら、見てごらん?
今この瞬間にだって、キミの周りにはたくさんのヒトが集まっているじゃないか。
みんな、キミに夢中なんだろう?
そう思うと、キミはまるで暗闇の中の一縷の光みたいだね。
どんなに暗い夜道であろうと、その輝きだけはみんな、見失わないと思っているのだから。
……なんて言ったら、笑われるかしら。
ねえ、どうなの。
僕の言葉を聞いてくれる人はたくさんいるけれど、深いところまで話したいのはキミだけで。
ふたりでお互いの秘密を話したりしたらきっと楽しいんだろうなって思ってるんだよ。
……あぁ、でもダメかな。
キミのことなら全て知り尽くしているから、秘密らしい秘密はないかもしれないよね。
それにしても……キミって本当に人気者だ。
ちょっと妬けちゃうくらいに。
*
話しかけられ、それに応対していると視線を感じた。
視線の元を辿るとそこにいたのは仲のよい"あの子"で。
微妙に壁際に隠れながら、ぢっと僕を見てくる姿に人知れず口元がゆるく弧を描く。
「…………」
ふむ。
これはなかなか面白い状況になったものだ。
やっとひとりきりになったし、ここはひとつ、"あの子"を驚かせてみようか。
そうと決まれば行動あるのみ。
僕はゆっくりと"あの子"に近づき、そして───。
「わっ!」
驚かした。
驚かした…のだが。
「…あれ?」
おかしい。
反応がないとはどういうことだ。
まさか無視されたのか!?
いやしかし、だとするとこちらをぱちぱちと瞬きして見てる意味がわからなくなるぞ!
はてさて一体どうしてなのか……。
首を傾げつつもう一度試みようとしたところで、「ぷ」という小さな笑い声が耳に届いて顔を上げた。
「ふふ……もう、だめだよ。びっくりするじゃない」
「えぇー……」
「何回やっても同じ結果になると思うけど」
「じゃあ次はもっと上手くやるよ」
「ははは」
呆れたような顔をしつつくすりと笑う"あの子"に、内心ほっとする。
(…よかった)
それにしても。
(何で、キミは僕を見ていたんだろう?)
【銀の祈り】:
シルバープレアー。
見られていることに気がついているが何故見られているかまでは気づいていない。
また人当たりがよく、困っている人がいると手助けするどっちかというと優等生タイプなので結構周りに慕われている。
だがいちばん楽しいのはお友だちである"あの子"と話している時だとか。