さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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【英雄】と比べるな定期。



キミがいた頃より、

シルバープレアーというウマは現役期間が長かったぶん、ファンも多かった。

同期である【英雄】にあと一歩届かずとも、挑み続ける姿に惚れ込んだ者。

そのまた父であるシルバーチャンプを応援していた者。

またまた世間でいう競走バとしてのピークが過ぎてもなお連対を続ける姿や、その長年の歩みにシルバープレアーの大叔父たる"あるウマ"を重ね合わせた者など…。

様々な理由で多くのファンから支持されている。

───次こそは勝つかもしれない。

そんな期待感すら抱かせてくれるのだから。

 

「…………」

 

……だが、そんなシルバープレアーももうすぐ引退だ。

クラシック級からシニア級と流れて、かれこれ5~6年ほどか。

普通ならば引退し、第二のバ生を生きていてもおかしくない年齢ではあるのだが…。

 

(思えば、長かったなぁ…)

 

出られるなら、どこでも出た。

大叔父譲りのどこでも走れる適正を使いに使い、芝でもダートでも、短距離から長距離でも、縦横無尽に。

そう、長年走ってきて、遂には。

 

「凱旋門賞、かぁ…」

 

実質帯同バのような打診ではあったけれど、出走できることになった。

この世界にいる者なら誰もが一度は夢見る舞台。

そこに自分が立てるとは思ってはいなかったし、正直今でも実感がない。

ただただ、嬉しい気持ちでいっぱいだった。

しかし同時に不安もある。

それはレースのことではなく、自分のこと。

 

「……大丈夫かな?」

 

思わず独り言ちてしまうほどには心配事があったのだ。

 

慣れた手つきで脚をマッサージする。

この世界に入ってずっと、怪我も無しにシルバープレアーに付き合ってくれた唯一無二の相棒…。

少しずつ少しずつ…シルバープレアーの力に()()()()()()()相棒…。

 

大叔父に似ているシルバープレアーは、体質も大叔父に似ていた。

肉体(ハード)才覚(スペック)が見合わない体。

だが怪我の多かった大叔父とは違い、シルバープレアーは一度も怪我をしたことがない。

大叔父のことを知る人が云うには『大叔父は老いることで才覚(スペック)を落とし肉体(ハード)に合わせたが、キミの場合は肉体(ハード)を鍛え上げることによって才覚(スペック)に合わせたのだろう』と。

 

確かに、そうかもしれない。

だからこそ、他のウマに比べて圧倒的に故障がない。

それこそが、シルバープレアーの強さの秘密でもあった。

だけど、それでも限界はある。

特にスタミナ面に関しては同期の、かの【英雄】と競っていたころより見るからに目減りしていて。

勝負根性も、【英雄】と競っていたころより無くしている。

それをシルバープレアーを支えるトレーナー含め、チームの皆が理解しているから。

 

「これが最初で最後のチャンス、か…」

 

そう言ってシルバープレアーは自分の頬をパンっ!と叩き、気合いを入れて。

 

「もうひとっ走り、っと…」





【銀の祈り】:
シルバープレアー。
他の同期がいなくなっても世代の強さを証明し続ける系高い堅い壁。
でも同期のライバルであった【英雄】と競っていた頃よりは弱くなっている…らしい(自己申告)。
なら何でずっと連対してるんです…?(純粋な疑問)

またそれはそれとして大叔父と適正などが似ており、ファンの中には重ねる人もいそう。
たぶん見る人によっては【英雄】とのクラシック三冠の戦いを大叔父のifとして見ていたりとか…?
でもifがあったとして、の勝敗に関しては有識者のみなさんでも侃侃諤諤の議論をしてそう。
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